研究課題/領域番号 |
16K11636
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
李 淳 日本大学, 歯学部, 講師 (10386055)
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研究分担者 |
大原 絹代 日本大学, 歯学部, 専修医 (10731606)
片桐 綾乃 日本大学, 歯学部, 助教 (40731899)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 神経障害性疼痛 / 口腔顔面痛 / 口腔粘膜 / 下歯槽神経損傷 / 三叉神経節細胞 / グリア細胞 |
研究実績の概要 |
様々な補綴処置によって口腔粘膜が傷害されると、創傷が治癒した後にも、口腔内に慢性的な異常疼痛が発症することがある。このような異常疼痛は、通常の鎮痛薬が奏功し難く治療に苦慮する場合が多い。ましてや、口腔粘膜を支配する末梢神経の損傷によって引き起こされる口腔内の異常疼痛を有する患者に対して総義歯などの補綴処置を行う場合、単純に疼痛部位の被圧処置だけで良好な成績を得ることは困難であり、義歯の設計に苦慮する。そのため、補綴処置を行なう段階では異常疼痛以外には何ら異常が認められないことから、義歯による被覆領域を設定することが困難であり、適切な補綴処置を提供することできず、治療が終了しても満足な結果が得られないことが少なくない。また、口腔顔面痛を熟知していない歯科医師は、このような異常疼痛を異常疼痛と診断することが困難であり、治療の必要がない健全歯を治療したり、有床義歯治療においては粘膜に異常が無いにも関わらず義歯調整や新製を延々と繰り返すなど、誤った治療を行ってしまう危険性がある。 これまでのヒトに関する研究では口腔粘膜の損傷によって引き起こされる痛みは慢性化しやすく,機械刺激に対する感受性が高くなるといわれている。異所性痛覚過敏には神経節細胞どうしの機能連関だけでなく、グリア細胞と神経節細胞間の機能連関も重要な役割を担っている可能性があると思われる。しかし、三叉神経の損傷によって口腔粘膜部に引き起こされる異常痛に関しては、基礎研究が少なくその神経機構に関しては不明な点が多く残されており、その詳細は不明である。本研究では神経機構解明だけでなく、下歯槽神経損傷モデルを作製して三叉神経節内における神経節細胞活動の変化とグリア細胞活性化について解析を行うことにより、口腔内全体でなく口蓋粘膜と下顎歯肉に発症した神経障害性疼痛に対する補綴学的治療法の基礎データを提供することを目的としている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、下歯槽神経切断モデルラットを作製し,下顎歯肉あるいは上顎口蓋粘膜に機械あるいは熱刺激を与え、逃避反射閾値を測定し、三叉神経節細胞に発現するリン酸化ERK発現を免疫組織学的に解析することにより、活性化細胞の増減を明らかにする予定であったが、行動学的解析の手技を確立するのに時間がかかってしまったために遅れを生じている。
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今後の研究の推進方策 |
行動学的解析の手技確立に時間を割いてしまっているため、下顎歯肉あるいは上顎口蓋粘膜に機械あるいは熱刺激を与え、逃避反射閾値を測定する方法ではなく、口腔粘膜上皮にvon freyによる機械的刺激を与えた際の逃避反射閾値を測定する方法も行っていく予定である。 また、逃避閾値が元も低下した時点のモデルラットを深く麻酔して潅流固定した後、三叉神経節を取出し、通法に従って切片を作製し活性型衛星細胞のマーカーであるglial fibrillary acidic protein (GFAP)による免疫染色を施し、解析には神経節細胞の周囲1/3がGFAP陽性細胞により取り囲まれている細胞数の計測とそれぞれの細胞の大きさについて解析を行う。また、GFAP陽性細胞に関しては下歯槽神経損傷モデルラットの三叉神経節において、発現領域が三叉神経I~III枝のどの範囲にまで及んでいるかについても解析を行う。 さらに、Fluorocitrate (FC)の衛星細胞活性および逃避閾値に対する影響として、IANモデルラットの三叉神経節にFCを7日間直接投与し、活性型衛星細胞の発現状態について免疫組織学的に解析を行う。 NO発現に関しては,NOの合成酵素であるnNOSをターゲットに解析を行う。IANラットの三叉神経節を取出し,nNOS免疫染色を行い,nNOS陽性細胞数の定量解析を行う。 また,三叉神経節を取出し,通法に従ってnNOSの発現量をウエスタンブロット法により定量解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度の実験計画の進行状況がやや遅れており、本来購入する予定であった抗体および実験器具などをまだ購入していないため。 また、進行状況のペースの遅れにより、本年度参加する予定であった学会に参加できず、学会発表を延期することとなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
手技の確立が難色を示していたために、本来購入する予定であった抗体および実験器具などの消耗品費に充当し、実験を進めていく予定である。また、データ収集および解析の遅れによる影響で学会での発表が平成29年度に延期になってしまったため、平成29年度に報告を行えるように平成29年度助成金と併せて旅費および学会参加費としても使用する。データ採取および解析を行うために適正な使用を行いたいと考えている。
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