研究課題/領域番号 |
16K11636
|
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
李 淳 日本大学, 歯学部, 講師 (10386055)
|
研究分担者 |
大原 絹代 日本大学, 歯学部, 専修医 (10731606)
片桐 綾乃 大阪大学, 歯学研究科, 助教 (40731899)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 三叉神経 / 異常疼痛 / 衛星細胞 / 下歯槽神経損傷モデル / 免疫組織化学的解析 / 逃避閾値反射 / 一酸化窒素 |
研究実績の概要 |
口腔粘膜が傷害されると、創傷治癒後にも、口腔内に慢性的な異常疼痛が発症することがある。このような異常疼痛は神経損傷によって引き起こされることから神経障害性疼痛と呼ばれ、これまでのヒトに関する研究では口腔粘膜の損傷によって引き起こされる痛みは慢性化し易く,機械刺激に対する感受性が高まるといわれている。本研究では口腔感覚の入り口である三叉神経節(TG)に焦点を当て、口腔粘膜の感覚を伝える下歯槽神経を損傷した(IANX)モデルラットを作製してTG内における神経節細胞活動の変化と衛星細胞活性化について解析を行うことで、口腔領域に発症した神経障害性疼痛に対する補綴学的治療法の基礎データを提供することを目的として実験を行った。 IANXラット口髭部に機械刺激を与え、頭部逃避反射閾値を測定した結果、非神経損傷(Sham)ラットと比較して、1,3,5日後において有意な閾値の減少を認めた。また、TGにおける衛星細胞の活性状態を免疫組織学的に解析し、衛星細胞がⅡ枝領域の神経障害性疼痛発症に対し関与するか否かを検討すると同時に、衛星細胞活性化への一酸化窒素(NO)の関与を明らかにするため,NO合成酵素であるnNOSの発現量を免疫組織学的およびウエスタンブロット法により検討した。その結果、TG内の活性型衛星細胞数およびnNOS免疫陽性細胞数は、Shamラットと比較して,IANX後3日目で有意な増加を認め、NOの発現量は6時間後に有意な上昇を認めた。さらにTG内への衛星細胞の活性化阻害剤であるFCおよびnNOS阻害剤であるNLPAの注入によって、活性型衛星細胞数は有意に減少し、頭部逃避反射閾値の減少の回復を認めた。 以上のことから、IANX後、傷害されたTG内の細胞から放出されたNOの発現により衛星細胞が活性化された後、口髭部を支配するTG内の細胞が活性化し異所性疼痛を引き起こしたものと考えられた。
|