研究課題/領域番号 |
16K11649
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
Munar M・L 九州大学, 歯学研究院, 学術研究員 (50432919)
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研究分担者 |
石川 邦夫 九州大学, 歯学研究院, 教授 (90202952)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | β-TCP顆粒セメント / 自己硬化型骨補填材 / 生体材料 |
研究実績の概要 |
本研究はβ-TCP顆粒の母床骨からの連続性確保、充填後の顆粒の移動に対応するため、石膏の硬化反応を応用した自己硬化性を有する硫酸カルシウム半水和物(CSH)被覆 β-TCP顆粒を作製することを目的としている。本年度はCSH被覆β-TCP顆粒の調製条件を検討し、CSH被覆β-TCP顆粒の硬化実験および得られた硬化体の基本物性の評価を主に行った。 0.25 mol/L、0.375 mol/L、0.5 mol/Lに調整した70℃の硫酸水素ナトリウム水溶液を用い、β-TCP顆粒をそれぞれに1、3、5、7日間浸漬した。その後、120℃で4時間加熱脱水することで、CSDからCSHに変換した。反応の追跡およびβ-TCPに被覆されたCSHの定量は粉末X線回折により行った。最終的に形成されるCSHの量は硫酸水素ナトリウム水溶液の濃度、浸漬期間に依存し、7日間浸漬した場合、0.25 mol/Lで40wt%、0.375 mol/Lで70wt%、0.5 mol/Lで90wt%のCSHがβ-TCP顆粒表面に形成されていることを確認した。 次に、それぞれの溶液に7日間浸漬して調製したCSH被覆β-TCP顆粒と生理食塩水とを練和した。練和後、CSH被覆β-TCP顆粒は硬化し、硬化時間はどの条件で調製したCSH被覆β -TCP顆粒でも10分前後であった。得られた硬化体の機械的強度は被覆したCSHの重量%に比例しており、90wt%CSH被覆β-TCP顆粒で作製した硬化体の強度は40wt%CSH被覆β-TCP顆粒のおよそ4倍であった。また、表面を走査型電子顕微鏡により評価したところ、β-TCPの顆粒同士がCSHにより連結していることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度はCSH被覆β-TCP顆粒の調製条件の検討および物性評価を行う予定であった。実際にはCSH被覆β-TCP顆粒のCSH被覆量が調製時の硫酸水素ナトリウム溶液の濃度に依存すること、得られたCSH被覆β-TCP顆粒は水で練和することで硬化すること、硬化体がCSH被覆量に依存することを明らかにした。また、CSH被覆β-TCP顆粒の硬化時間の調節および実験動物での評価の予備実験も行っており、申請時の実験計画よりも進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は得られたCSH被覆β-TCP顆粒の硬化時間の制御および実験動物を用いて病理組織学的検索を行う予定である。 CSH被覆β-TCP顆粒の硬化時間の制御は現在CSH単体を用いて予備検討を行っている。CSHの硬化は塩化ナトリウム、硫酸ナトリウムなどが知られている。これらの添加物を含む水でCSH被覆β-TCP顆粒を練和して硬化体を得る際に、実際の手術でのハンドリングに適した硬化時間となる添加物およびその濃度を見つけ出す。目標の硬化時間はこれまでのセメント系骨補填材の経験から5分前後とする。 実験動物を用いた評価はCSH被覆β-TCP顆粒セメントを骨欠損部に埋入した際の顆粒セメントの骨吸収および骨欠損部における新生骨形成量を病理組織学的検索により行う。実験動物としてはウサギを予定しており、ウサギ大腿骨に骨欠損を作成し、水と練和して調製したCSH被覆β-TCP顆粒セメントを埋入する。埋入1、3、6ヶ月後の顆粒セメントの骨吸収および新生骨の形成量を脱灰標本であればヘマトキシリン・エオシン染色、非脱灰標本であればビラヌエバ・ゴールドナー染色を行う。また、必要であれば顆粒が流出しやすいラット頭蓋骨に骨欠損を作成してCSH被覆β-TCP顆粒セメントを埋入し、β-TCP顆粒とβ-TCP顆粒セメントの流出量を比較する。
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