研究実績の概要 |
骨・歯周組織再生治療において, 細胞移植を行わずシグナル分子(rhBMP9),生体材料(吸収性コラーゲンスポンジ:ACS),さらに物理刺激(低出力超音波パルス波:LIPUS)や欠損改変(骨髄穿孔:IMP)を行うことで最大限に宿主細胞の動員と賦活化,創傷治癒の安定化を計るin situ(欠損内での)組織工学アプローチの確立を目的に実験を行った。 骨再生評価は①ラット頭蓋骨欠損モデル,歯周組織再生評価は②イヌ2壁性骨内欠損モデルを用いた。実験系①ではラットの頭頂骨に径2.7mmの骨欠損を外科的に作製(4欠損/匹)し, LIPUS非照射群は骨欠損:OFD:a群,ACS移植のみ(ACS):b群, ACS/rhBMP9移植:c群を施術し, LIPUS照射群はOFD+LIPUS: d 群, ACS+LIPUS: e群, ACS/rhBMP9移植+LIPUS: f群に分け4週観察を行った。その結果, f群でa群,b群,d群,e群より欠損閉鎖率で, またa群, b群, c群, d群, e群に対して新生骨面積率で統計学的に有意に高い値を認めた。この結果よりrhBMP9の効果がLIPUSを併用することで骨再生により効果的であることが示唆された。 実験系②ではイヌの下顎第2前臼歯と第4前臼歯に外科的に作製した2壁性骨内欠損(4欠損/匹)の一方にIMP,他方をOFDとした後,歯肉弁を復位縫合し片側をLIPUS非照射群,対側はLIPUS照射群(IMP+LIPUS群,OFD+LIPUS群)とし,術後1週より3週間LIPUSを照射し4週観察を行った。その結果, OFD+LIPUS群とIMP+LIPUS群の新生骨形成量はOFD群より,新生セメント質形成量はOFD+LIPUS群がOFD群, IMP群より有意に多かった。この事からLIPUSは2壁性骨内欠損においても歯周組織再生を効果的に促進することが示唆された。
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