研究課題
歯科インプラント治療を長期的な成功に導くためには,力学的因子が重要である。申請者は,インプラントの直線埋入と offset 埋入のモデルを製作し荷重負荷試験と三次元有限要素解析を行い比較・検討してきた。本研究では,高齢者や難症例を想定し,骨量と骨質に制限がある場合の傾斜埋入が,顎骨周囲に及ぼす影響を分析し,適切なインプラントの埋入方法を明らかにすることを本研究の目的とした。従来実施した直線配置とoffset配置のモデルと同じ素材の顎堤模型に,直線,10度,20度に傾斜埋入した3種類の模型と上部構造を準備した。このモデルにインストロン万能試験機を使用して,それぞれの荷重点に0.5 mm/min の速度で100 Nの垂直荷重を加えた。作業台とジグの間にストレインゲージを取り付け,荷重点の沈下量をインプラントの被圧変位量として計測した。 100 N垂直荷重時の実験モデルにおける,第一大臼歯相当部インプラント部の荷重部位ごとのひずみを解析した。直線配置モデル,10度傾斜モデル,20度傾斜モデルを比較した。全ての配置において荷重側のひずみゲージで大きな圧縮ひずみが認められた。また、micro-CT撮影装置にモデルを固定し,管電圧90 kV,管電流10 μA,断層厚106 μmの撮影条件で,CT像の撮影を行なった。得られたCTデータから三次元有限要素解析ソフトを用い,FEAモデルを作製し最終年度は解析した。その結果,インプラント体の舌側傾斜が大きくなるほど,頬側荷重時の被圧変位量は小さくなり,舌側荷重時の被圧変位量は大きくなった。舌側傾斜が大きくなると,インプラント体を舌側へ傾斜させる力が働き,変位量が大きくなったと考えられる。
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