研究課題/領域番号 |
16K11662
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研究機関 | 日本歯科大学 |
研究代表者 |
田中 彰 日本歯科大学, 新潟生命歯学部, 教授 (60267268)
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研究分担者 |
佐藤 義英 日本歯科大学, 新潟生命歯学部, 准教授 (20287775)
石川 博 日本歯科大学, 生命歯学部, 客員教授 (30089784)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ヒト頬脂肪体由来幹細胞 / 神経分化誘導細胞 / アテロコラーゲンビーズ / 下歯槽神経再生 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、ヒト頬脂肪体組織より、体性幹細胞を分離し、神経様細胞へと分化誘導させ、同細胞の質的評価と、in vivo 実験に応用可能なアテロコラーゲンビーズを使用した細胞ビーズの作成を行った。 分化させた神経様細胞は、神経細胞様の形態を維持し、神経細胞マーカーであるNestin、βⅢtubulinおよびNeurofilament200や、アストロサイトマーカーであるGFAPなどの発現を認めた。電子顕微鏡像では、軸索様の所見を認め、一方向性に微小管や微小線維が豊富にみられた。さらにシナプス様構造も確認できた。 これらの神経様細胞を、作成したアテロコラーゲンビーズの周囲に旋回培養させることにより付着させ、アテロコラーゲン神経細胞ビーズの作成を行った。 歯科領域で、手術時に余剰組織として採取可能な頬脂肪体組織は、神経堤由来であることから、神経細胞への分化が比較的容易で、安定供給可能であることが明らかとなった。さらに分化誘導した神経様組織は、細胞形態ならびに各種性質評価により、神経としての性格を十分に持ち合わせ、移植実験に最適な条件であることを確認した。 移植神経細胞の損傷部への局所移植においては、細胞の局所停留が重要となるが、それを安定化させる方策としてアテロコラーゲンビーズの周囲に細胞を付着させ、ビーズを移植部に配列することを着想した。移植ビーズ作成技術が向上し、ビーズの作成に技術的な目処がたったことから、次年度以降のin vivo 実験へ供することが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
神経分化誘導細胞をアテロコラーゲンビーズに付着させて細胞ビーズを作製することに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、分化誘導した神経細胞、上清と細胞ビーズを用い、各種移植実験を遂行し、各種評価を行う予定である。移植実験については、下歯槽神経切断ラットもしくは下歯槽神経結紮ラットを用いて実験を行う。神経分化誘導細胞を付着させたアテロコラーゲンビーズをラットの下歯槽神経切断部に埋入するように細胞ビーズを敷き詰め、さらに細胞ビーズの局在を留めるためにメンブレンにて被覆する。移植後は約1か月、2か月、3か月および半年の期間を設けることを検討している。さらに、細胞移植とは異なるアプローチ法および低侵襲性の高い方法として、培養上清を用いた全身的投与を介した神経賦活が可能か検討を行う。これは、下歯槽神経結紮ラットを用いて実験を行う予定である。神経細胞へと分化誘導する際の、培養上清をすべて回収し、その培養上清を下歯槽神経結紮ラットに対して、全身的投与を行う予定である。投与は腹腔内投与もしくは尾静脈より静脈内投与を検討している。上清投与は、単回投与および複数回投与(例:週2回×4週間を1クールなど)を予定とし、投与開始から約1か月で移植後評価のため、組織を採取する予定である。 移植後の評価として、移植細胞が神経としての組織学的形態と、生理学的機能を有しているか、解析を行う。組織学的な解析は形態学的な解析の他に、神経細胞特異的な抗体(抗Nestin抗体, 抗NF200抗体,抗βⅢtubulin抗体,抗GFAP抗体,抗MeuN抗体等)を使用し免疫組織染色を行う予定で、さらに遺伝子発現も、RT-PCR法およびreal time PCRにて解析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度予定していた神経細胞への誘導と得られた細胞の性質評価が順調に進んだことと、in vivo移植実験に供する細胞ならびにアテロコラーゲン細胞ビーズの作成を、実験直前に改めて施行するために、当該部分の作成に係る費用が、次年度に持ち越される形となった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は、予定したin vivo移植実験の実験に供する移植細胞の作成と評価に向けて、次年度使用額をそれらの実施に際して必要となる各種物品の購入に充てる予定である。翌年度分の請求分に関しては、当初の計画通り、in vivo移植実験に供する動物の購入費ならびに生理学的評価等に用いる予定である。
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