研究課題
歯髄に多分化能を有する組織幹細胞が存在することが知られているが,この細胞の特性ならびに象牙芽細胞への分化機構は不明な点が多い。近年,転写因子Gli1を発現する歯原性間葉細胞が,象牙芽細胞を含む多種類の細胞へ分化することが示された。本研究では,Gli1陽性細胞で緑色蛍光GFPが発現するGli1-GFP トランスジェニックマウスと癌抑制遺伝子p53欠損マウスを交配し,得られたマウスからGli1陽性歯髄幹細胞の細胞株を作製した。FACSにより分離したGli1-GFP細胞は,GFP陰性細胞とほぼ同様な細胞形態であった。また,石灰化誘導すると誘導5日後からアリザリンレッド陽性の石灰化基質を形成した。しかし,この細胞株のGFP蛍光は,移植実験に用いるには充分でなかったため,Gli1-CreERT2;Rosa26tdTomato;p53欠損マウスから歯髄幹細胞の株化を目指している。また,タモキシフェン投与後にGli1陽性細胞とその子孫細胞が赤色蛍光Tomatoを発現するGli1-CreERT2;Rosa26tdTomatoマウスを作出した。タモキシフェン投与直後の4週齢マウス歯髄では,Tomato陽性細胞は血管周囲にわずかに存在するだけであった。そこで,このマウスの臼歯を野生型マウス皮下へ移植し,歯髄内硬組織形成を観察した。移植後7日後から骨様組織が島状に認められ,この組織の形成細胞および周囲の細胞がGli1-Tomato陽性を示した。従って,完成歯の歯髄組織に存在するGli1陽性細胞は硬組織形成細胞への分化能を有することが明らかとなった。さらに,Gli1-Tomato陽性細胞を歯髄から分取し,CFU-Fアッセイを行ったところ,幹細胞性を示した。加えてin vitroで骨芽細胞,軟骨細胞,脂肪細胞への分化し,多分化能性を確認した。
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