研究課題/領域番号 |
16K11667
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研究機関 | 大阪歯科大学 |
研究代表者 |
馬場 俊輔 大阪歯科大学, 歯学部, 教授 (40275227)
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研究分担者 |
橋本 典也 大阪歯科大学, 歯学部, 准教授 (20228430)
本田 義知 大阪歯科大学, 歯学部, 准教授 (90547259)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 薬物徐放担体 |
研究実績の概要 |
線維芽細胞成長因子(bFGF) のヘパリンとの親和性に着目し、ヘパリンをあらかじめαリン酸三カルシウム多孔質体(α-TCP)に化学的に結合させた薬物徐放担体を開発した。本課題では、これを担体としてヒトiPS細胞や脂肪細胞から誘導した間葉系幹細胞と組み合わせて口腔癌等によって生じた広域顎口腔組織欠損の顎骨再生を行うための基礎研究を行うことである。 bFGFを搭載したヘパリン化αTCP多孔質体上で、間葉系幹細胞を培養した。間葉系幹細胞の骨芽細胞発現マーカーならびに歯根膜細胞のセメント質分化マーカーの発現がbFGF/薬物徐放性骨再生材料群でコントロール群に比較して高い発現を示した。このことは、bFGF/薬物徐放性骨再生材料群でbFGFがヘパリンと複合体を形成することによって生理活性の高い構造が保持されていたことから、骨芽細胞分化や歯根膜細胞分化を促進したと考えられる。 ビーグル犬の下顎骨に二壁性骨欠損を形成し、実験群はα-TCP、対照群はβ-TCPを填入した。術後8週に安楽死させ、ヘマトキシリンエオジン染色による組織学的評価を行った。実験群では周囲の新生骨、新生セメント質の形成が認められた。しかし、α-TCPは残存し、シャーピー線維を伴った歯根膜はわずかに認められただけであった。これは、bFGFを搭載したヘパリン化αTCP多孔質体に比較して歯周組織再生は劣るという結果になった。一方で、対照群は、β-TCPの残存は認められたものの大部分が吸収し、ハバース構造を含む新生骨が認められた。また、新生セメント質とシャーピー線維を含む歯根膜の形成も認められた。このことは、イヌ下顎骨二壁性骨欠損モデルにおいて、bFGFを搭載しないヘパリン化β-TCP多孔質体は歯周組織再生を促すことが示唆された。成長因子を用いないことで、生物学的危険性が低くなり、実用化へ向けた可能性が高まった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
動物実験の評価に時間がかかったため、研究期間を1年間延長した。
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今後の研究の推進方策 |
薬物徐放担体を担体としてヒトiPS細胞や脂肪細胞から誘導した間葉系幹細胞と組み合わせて骨芽細胞への誘導条件を探索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
in vitro評価を行う分子生物学的試薬の購入を行わなかったから。また、国際学会での発表を行わなかったから。本年度は培養実験が増加するため、それら試薬や培養液等の購入が必要となる。
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