線維芽細胞成長因子(bFGF) のヘパリンとの親和性に着目し、ヘパリンをあらかじめαリン酸三カルシウム多孔質体(α-TCP)に化学的に結合させた薬物徐放担体を開発した。本課題では、これを担体としてヒトiPS細胞や脂肪細胞から誘導した間葉系幹細胞と組み合わせて口腔癌等によって生じた広域顎口腔組織欠損の顎骨再生を行うための基礎研究を行うことである。 昨年度の成果で、イヌ下顎骨二壁性骨欠損モデルにおいて、β-TCPはα-TCPに比較してbFGFを搭載しないヘパリン化β-TCP多孔質体は歯周組織再生を促すことが示唆された。しかし、完全に置換しないという欠点が明らかとなった。 我々は、β-TCP多孔質体に代わる足場材料として物理的強度を有しながら多孔性構造を有する骨補填材の原材料をバイオミミクリーの観点から検索し、サンゴ外骨格に注目した。2歳齢の雌性ビーグル犬の前臼歯部に垂直的高さ5㎜,水平的深さ3㎜の根分岐部Ⅱ級骨欠損を作成し,実験群には除タンパク処理したエダコモンサンゴ外骨格の顆粒を埋入した。また何も埋入しない群を対照群とした。 エックス線学的評価では,実験群は周囲骨との境界は不明瞭になり,対照群と比較して根分岐部の骨体積の増加が観察された。共焦点レーザー走査型顕微鏡において人工的骨欠損部にカルシウムの添加が認められ,病理組織学的評価ではまた骨組織への置換を認めた。以上の結果からサンゴ外骨格由来骨補填材の埋入は歯周組織再生において有効であることが示唆された。
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