骨吸収抑制剤によるMRONJ(Medication related osteonecrosis of the jaw)様症状は、ビスフォスフォネート系製剤のみならず、薬理学的作用機序が異なるヒト型抗RANKLモノクローナル抗体製剤(デノスマブ)においても発症することが報告されている。本研究では、抗RANKLモノクローナル抗体製剤によるMRONJ発症機序について、マウスを用いて検討を行った。平成29年度までの研究で、骨髄抑制下における胸腺皮質における胸腺髄質上皮細胞(medullary thymic epithelial cell: mTEC)の減少、さらに、末梢血におけるヘルパーT細胞の分画の異常が判明した。以上の実験結果から、骨髄における造血機能の低下がMRONJ様症状発症の発端になっていると推測した。そこで、平成30年度の実験では、造血因子を投与することで骨髄の造血機能を回復させることによりMRONJ様症状が改善・緩和するのかを目的として実験を行った。造血因子投与群と非投与群とを比較したところ、造血因子投与群においてMRONJ様症状が緩和されていた。さらに、胸腺におけるmTEC細胞数が有意に増加していること、末梢血におけるヘルパーT細胞の分画異常の部分的な改善が生じていることが確認された。以上の実験結果から、ヒト型抗RANKLモノクローナル抗体製剤によるMRONJ様症状の発症には、その背景に骨髄組織における造血機能の低下があり、造血機能を回復させる薬剤を用いることによりMRONJ様症状を改善・緩和させる可能性が示唆された。
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