研究課題/領域番号 |
16K11676
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
杉山 円 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (90451814)
|
研究分担者 |
藤原 夕子 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (50466744)
疋田 温彦 東京大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (60443397)
西條 英人 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (80372390)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 間葉系幹細胞 / ステムネスシグナル / 幹細胞誘導型再生骨 / MSCニッシ / 造血幹細胞 |
研究実績の概要 |
細胞の相互作用の原理原則から、間葉系幹細胞(MSC)のステムネス維持には造血幹細胞(HSC)の支持が不可欠であるとの仮説から、歯槽骨において増量した骨が消退せずに、量と質を維持するためには、間葉系幹細胞が存在、増殖することが必要であり、また造血幹細胞から間葉系幹細胞への増殖刺激あるいは類似の増殖刺激が不可欠であると考えている。本研究では、造血幹細胞によって誘導されるMSCのステムネス・シグナルを解明し、組み換えヒト(rh)BMP-2で誘導する再生骨に、シグナル関連分子を活用した、骨形成の促進と維持を実現する方法を確立し、長期に骨量・骨質を維持できる機能的骨再生を実現することで骨再生への応用を目指すとともに、口腔外科再生医療の発展の一助とすることを目的として、研究を実施している。本年度は①ステムネス・シグナル関連因子の検索と機能解析および②幹細胞誘導評価と因子の仕様設定までを実施計画として研究を遂行した。まず、造血-間葉相互作用実証のため、幹細胞ニッシの本態であるマウス骨髄由来MSCおよびHSCを用いて共培養をおこなった。基礎検討により共培養によるMSCの増殖能、分化能の顕著な変化を認めたことから、共培養後のMSCのみをFACSにより分離し、非共培養MSCとの遺伝学的相違点をマイクロアレーにて解析し比較検討をおこなった。その結果、MSCのステムネスに寄与すると思われる遺伝子発現の著明は変化を認めた上位40遺伝子に着眼し、再現性の確認ののち最終的に4遺伝子を検討対象とし、これら遺伝子のインヒビターを用いて、in vitro平面およびアテロコラーゲン包埋3次元培養における機能欠損モデルとして、MSC特性変化を評価した。その結果、着眼各遺伝子機能欠損によって、MSC特性の低下および向上を認めたことから、次年度以降は最終的な因子同定およびこれらを用いた再生骨作製をおこなっていく。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
幹細胞ニッシの本態と予測されるMSCとHSCを共培養することで、当初、仮説していたとおり、MSCの特性に寄与する現象に有意性が生じたことにより、相互作用によるステムネス関連因子の特定に近づいたと考える。その結果として、マイクロアレー後の全検出遺伝子からのステムネス関連因子を比較的早く絞り込むことが可能となった。最終的には4因子について、現在は検討しているところであるが、これら因子にはインヒビターが存在することから、ベクター導入による遺伝子機能欠損細胞の作製が必要なくなったことも研究進捗に寄与しているものと考える。しかしながら、一実験を実施するためには細胞確保、培養、評価といった一連の作業があり、これらに要する期間が1~2か月となるため、この期間がさらなる進捗を妨げている要因となるため、実験系の改良は必要と考える。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度に特定した4因子の機能解析および当該因子の造血-間葉相互作用における作用機序を解明することが重要であると考える。したがって、現在実施しているin vitro評価とその結果を基にしたin vivo評価も実施していくことが重要であると考える。まずは機能的再生骨作製技術のベースとなる足場人工骨の作製技術を確立させ、その後に特定因子を添加した足場材の作製と因子の徐放効果の検証をおこなっていき、in vitroでの結果と照らし合わせていき、最終的な再生骨の仕様を決定し、技術確立をおこなっていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2016年度実施計画において、当初購入予定であったマイクロアレーについて、現有キットによりカバーできることが判明したことから、保有キットにてアッセイを実施し、また、解析においても、外注予定であったが、バイオインフォマティックスに精通している協力者の尽力により、助成金の繰り越しにつながったと考える。また、旅費に関しても、当初発表予定だった学会への不参加により、助成金の繰り返しにつながったと考える。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度への繰り越しに関しては、小動物を用いた欠損モデル作製および移植試験における検討を当初より詳細に実施することが可能となったため、購入、飼育費用に充当できるものと考える。また、今後頻回に使用するBMP-2は非常に高価なため、試薬購入費用を前年度繰越金で充当できると考える。旅費に関しても、次年度演題発表が予定されている学会へ充当させることで繰り越し分を償却できるものと考える。
|