研究課題/領域番号 |
16K11678
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
浅輪 幸世 東京大学, 医学部附属病院, 特任助教 (10769912)
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研究分担者 |
西澤 悟 東京大学, 医学部附属病院, 特任助教 (00646200)
星 和人 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (30344451)
疋田 温彦 東京大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (60443397)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 再生軟骨 / アログラフト / 細胞外基質 |
研究実績の概要 |
口腔外科の主要な対象疾患である口唇口蓋裂の治療においては、すでに自家再生軟骨が導入されている。しかし、再生組織の汎用化を目指すためには、同種再生軟骨(アログラフト再生軟骨)の開発が不可欠である。本研究では、アログラフト再生材料に対する免疫反応を詳細に解析し、細胞外基質の成熟や軟骨細胞分化の最適化を図り、免疫寛容性の高いスーパーアログラフト再生軟骨を作製する。得られたスーパーアログラフト再生軟骨による知見は、口腔外科・整形外科領域の軟骨・骨再生のみならず、移植医療に対して新技術、新概念が提示できると考える。 本研究では、生体軟骨基質の免疫寛容の機序を各T細胞の発現傾向、動的挙動を評価し、抗原提示細胞の樹状細胞やマクロファージとの相互作用を組織学的やプロテオーム解析を行うことにより、軟骨基質における免疫寛容の概要を明らかにする。さらに、軟骨組織を構成成分毎に分別し、各軟骨構成成分に対する免疫応答や免疫寛容の網羅的スクリーニングのデータをもとに、in vitroで軟骨基質、細胞成分の分化段階的な免疫応答性を詳細に評価する。以上の検討より、移植後の免疫寛容を誘導する制御機序を解明し、より免疫寛容性の高いスーパーアログラフトが可能な再生軟骨を作製する培養方法を確立する目的として、次年度は、各軟骨構成成分に対しての免疫応答性およびアログラフトに適した基質と細胞成分のin vitro再構築と免疫寛容の誘導を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アログラフトに適した軟骨細胞の特性を検討するため、異なる培養期間(短期、長期)でヒト耳介軟骨細胞を用いて単層培養を行い、免疫抑制下の免疫正常マウスの背部皮下に移植を行った。移植2,4週間後、長期培養を行った培養軟骨細胞のみ軟骨基質の形成が認められた。この結果より、培養条件によって異なる性質を有するヒト軟骨細胞は軟骨基質産生能が抑制され、軟骨基質産生能に差異が生じることが示された。したがって、長期培養を行うことにより、培養細胞の特性が変化し、免疫抑制下でのゼノ移植において基質産生が可能であることが推測された。加えて、移植細胞の分化状態と免疫応答細胞の関連性を明らかにするため、培養期間による分化状態の異なるビーグル耳介軟骨細胞とビーグル犬から単離した初代脾臓細胞の共培養を行ったところ、長期培養を行った培養軟骨細胞との共培養では、脾臓細胞の増殖を抑制した。したがって、移植細胞の分化状態によって免疫反応性に違いがあることが示された。次に、アログラフトに適した基質を検討するため、先年度にin vitroで作製した再生軟骨による脱細胞化までの培養条件や脱細胞化処理の最適を実施した。これら基礎検討をもとに、脱細胞化再生軟骨にアロの軟骨細胞を再挿入し、アログラフトとしての有効性を検討した。脱細胞化再生軟骨への細胞挿入の方法は、物理的な振盪や凍結乾燥後に浸潤させる方法や針での注入など、さまざまな条件を試行した結果、凍結乾燥後の浸潤と針での注入によって細胞が脱細胞化基質内に貯留し、培養することにより、基質内に生着、増殖することが確認された。再挿入したアログラフト再生軟骨をヌードマウスの背部皮下に移植し、4週間後に解析を行った結果、自己再生軟骨と同等のGAGの蓄積およびタイプIIコラーゲンの産生量の軟骨基質が形成され、軟骨細胞はアロ脱細胞化再生基質を足場として利用できることが明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
軟骨構成成分・要素の免疫原性を明確にした上で、Wister系ラットの肋軟骨細胞を用いて最適な脱細胞化再生基質と骨髄液より単離したBMSCを用いて最適な分化誘導を行った軟骨細胞を組み合わせることにより、アログラフトに最適な作製方法を検討する。 その後、確立した作製方法より作製した免疫原性が低いスーパーアログラフトをSD-Tg(CAG-EGFP)ラット(6週齢、雄)の背部皮下に移植する。移植前と移植4週間後の形態計測、細胞生存性、GFP陽性免疫応答細胞の経時的挙動を解析することにより、スーパーアログラフトの有効性を評価する。さらに、免疫寛容に重要なメディエーターであるTregとスーパーアログラフトの免疫寛容獲得の機構を確認するため、CD25,CD4陽性Treg、Tregのマスター制御因子であるFoxP3の発現およびエフェクターT細胞のマーカーである RAR relatedorphanreceptorγt(RORγt)、IL-17の発現分布を検討することにより、Tregによる免疫寛容の獲得機序とともにスーパーアログラフト再生軟骨移植を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由と使用計画 培養軟骨細胞と脾細胞との共培養後の培地とアログラフト再生軟骨の培養中の上清は、網羅的なプロテオーム解析をするために外注を予定しているが、高額なため条件を絞り込む必要性があった。 プロテオーム解析によるリン酸化部位の同定や発現蛋白の同定を行い、基質と細胞成分に対する免疫応答細胞の関連性を明らかにし、基質成分、細胞成分の免疫獲得に必要な構成成分の同定を行う。
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