研究課題
慢性ストレス状態における口腔顔面痛の増大をモデルラットを用い脳神経科学的に明らかにした。ストレス処置として繰り返し強制水泳ストレスを3日間行った。4日目、咬筋侵害応答を定量した。応答は神経興奮のマーカーである Fosタンパクの発現を指標とした。咬筋への疼痛刺激はホルマリン刺激にて行なった。繰り返しストレスは1)強制水泳ストレス処置時の非水泳時間を有意に延長させた;2)三叉神経脊髄路核尾側亜核(Vc)でのFos陽性細胞数を増加させた。Vc領域を区分しFos発現を定量した。Vcと頚髄の移行部では浅層、深層のいずれの部位においても Fos陽性細胞数の増加を認めた。これらのストレス効果はホルマリン刺激側だけでなく反対側でも観察された。さらにVcと三叉神経脊髄路核中間亜核の移行部(ViVc)でのFos発現を定量した。ViVc部でもFos陽性細胞数の有意な増加が確認された。ストレスは、Vc領域での侵害応答を増大させ、結果として痛みを増大させることを示唆する。さらに従来、咬筋など顎顔面部の侵害応答は、ViVcを興奮させるが環境の変化の影響を受けにくい。しかしこのストレス状態では ViVc部で興奮性の増大が認められた。つまりViVc部はストレス誘発性の咬筋侵害応答に積極的に関与していると思われる。次に以上の侵害応答の増大の生体基盤を検討した。選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)は抗うつ効果を示す。本実験ではSSRIの繰り返し投与による、うつ行動、増大した咬筋侵害応答の調節に関与するかを検討した。SSRIの繰り返し投与は、うつ様行動の低下を示した。またストレス処置によって増大したVc部の侵害応答の増幅は、SSRI投与によって低下することが明らかになった。以上の結果より、繰り返し強制ストレスは咬筋侵害応答を増大させるが、その機構はセロトニン機構の変調によることが示唆された。
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