研究課題/領域番号 |
16K11687
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
神田 拓 広島大学, 病院(歯), 助教 (00423369)
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研究分担者 |
岡本 哲治 広島大学, 医歯薬保健学研究科(歯), 教授 (00169153)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | cowden症候群 / Pten遺伝子 / がん抑制遺伝子 / 無血清培地 / 常染色体優性遺伝 / iPS細胞 |
研究実績の概要 |
Cowden症候群(CS)は口腔及び消化管の多発性腫瘤や皮膚病変を主症状とし,高頻度に乳がんや甲状腺がんを発症する常染色体優性遺伝性疾患であり,がん抑制遺伝子Ptenの変異が関与している.本研究では本学倫理規定(第ヒ-72号及び第ヒ-58)に基づき同意を得られたCS患者末梢血よりPTEN遺伝子の新規変異を確認したiPS細胞の誘導を行い,本症候群の病態解明および新規治療法の開発を目的としている.これまでにがん抑制遺伝子PTEN変異CS患者血清より採取した末梢血より疾患特異的iPS細胞(CS-iPSC)を当施設で開発,確立したフィーダーフリー無血清培養系(hESF9)において樹立することに成功した.本培養系ではCS-iPSCの誘導効率は0.24%を示し, 健常人由来iPSCのそれ(0.05%) と比較して有意に高値を示した.CS-iPSCは各種未分化マーカーを発現し,in vitroでの胚様体形成及び in vivoでのテラトーマ形成にて3胚葉への分化多能性を有することを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で確立したCS-iPSCの誘導効率は0.24%で高率であった。この培養系を用いてDroplet Digital PCR 法を用いた未分化マーカー遺伝子発現量を行い,未分化性を維持していることを確認し得た.現在胚様体形成法を用いた分化多能性の検討し,三胚葉マーカーとして①神経細胞マーカーであるβⅢtubulin②平滑筋マーカーαSMA③肝細胞マーカーAFP蛋白の発現を蛍光免疫染色で確認している.また今後確立したCS-iPS培養系を用いた Teratoma形成及びその組織学的検討を計画している。平成29年度内に特異マーカーの購入が困難であったため、次年度予定の科研費と合わせて上記研究計画の実施を予定している。
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今後の研究の推進方策 |
フィーダーフリー・無血清培養条件でCS-iPSC及びCS-PBMCの各細胞由来DNAのSTR解析による比較を行う予定である.また,CS-iPSCにおける変異Pten遺伝子由来mRNAの発現の検討やPten遺伝子発現とAKTシグナル伝達系の検討を行うことでヒトにおけるCowden疾患の病態解明,体細胞変異における発癌機構や癌の進展を解明を行う予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究において中心となる長期間無血清培養系は各種基礎培地および培地に添加するために必要な種々の細胞増殖因子や蛋白が必要であり,また細胞を継代・維持するための培養用製品や培地およびサプリメントに関して経費が必要であった. また.誘導したヒトiPS細胞次世代シーケンシング (NGS) による網羅的遺伝子解析やサンガーシークエンス法を用いた変異部位の検索を行う必要があった.前年度MAPK関連の抗体が必要であったが、輸入品のため前年度の納品に間に合わず、次年度使用額が生じた。本使用額は先に述べた抗体購入のために使用し、ウェスタンブロット解析に使用する予定である。
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