研究課題
口腔癌は全癌の5%程度を占めており、手術を中心とした集学的治療が行われており治療の可能な癌の一つになってきた。しかしながら、口腔癌は呼吸、咀嚼・嚥下、発声、構音などの生活上で重要な機能が集中した部位であり、手術による機能障害は大きなQOLの低下をもたらす。そこで手術による機能障害を避け得る、新しい治療法の出現が待望されている。近年、ウイルスゲノムを遺伝子工学的に改変し、癌細胞で選択的に複製するウイルスを癌治療に応用する試みがなされ、特に単純ヘルペスウイルスI型(HSV-1)は癌治療に適した特徴を有することがわかってきた。治療用の増殖型変異HSV-1は、癌細胞に感染すると複製し、その過程で宿主の癌細胞を死滅させる。複製したウイルスは周囲に散らばって再び癌細胞に感染し、その後、複製、細胞死、感染を繰り返して抗腫瘍効果を現す。第二世代の増殖型HSV-1(G207)は二重変異を有し、脳腫瘍に投与できるよう安全性を重視して世界で初めて臨床用に開発された。本研究の礎を築いた研究分担者藤堂具紀 (東京大学医科学研究所先端がん治療分野・教授) は、その基礎開発から臨床試験に携わり、治療原理、抗腫瘍効果の機序、他の治療法との併用効果、安全性などを解明した。藤堂らはその開発経験から、G207を改良し、世界で初めて三重変異を有する第三世代遺伝子組換えHSV-1(G47Δ)を作製することに成功した。このG47Δは、癌細胞におけるウイルス複製能と惹起される抗腫瘍免疫が増強し、安全性を維持しながら抗腫瘍効果が格段に改善した。また高いウイルス濃度が生産でき、実用性が高い。ウイルス療法を口腔癌の治療の臨床に導入できれば、手術を必要としない低侵襲治療が可能となる。
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