研究課題
PD-L1はがん微小環境における、がん免疫逃避機構の中心的経路の一つである。一方、p53遺伝子は、全悪性腫瘍の約50%に変異が検出されている腫瘍抑制遺伝子である。またCK17は癌細胞の分化増殖に関与していると考えられている。当科で治療を行った口腔扁平上皮癌49例の生検材料を用い、PD-L1、p53、CK17の抗体を用いて免疫組織化学染色を行い、その発現の関連性を検討した。また、性別、年齢、TNM stageなどの臨床的因子とPD-L1、p53、CK17の陽性、陰性の免疫組織学的結果との関連性についての評価を統計的にFisher’s正確検定を用いて行った。口腔扁平上皮癌におけるp53の陽性率は63.2%、CK17の陽性率は91.7%、PD-L1(腫瘍細胞)の陽性率は48.9%、PD-L1(腫瘍浸潤リンパ球)の陽性率は57.1%であった。口腔扁平上皮癌腫瘍細胞において、PD-L1の発現はp53の発現に正の相関を認めた。CK17の発現とPD-L1発現には相関は認められなかった。TNM stage において、p53の発現は、stageが進むにつれて、発現率の増加が認められた。Kaplan-Meier法による5年疾患特異的生存率は、PD-L1発現陰性、CK17 発現強陽性でやや低くなる傾向があるが、有意差は認めなかった。p53発現による生存率の差は認められなかった。ハザード比をみてもこれらの因子と生存率に有意な関連は認められなかった。この研究結果から、口腔扁平上皮癌でPD-L1とp53の発現に正の相関がある可能性が考えられる。変異型p53 蛋白は分解時間が著しく遅延し核内に蓄積されるため、免疫組織学的に蛋白過剰発現として同定される。p53はPD-L1の発現を直接阻害するが、機能を失った変異型p53が蓄積されると、PD-L1が過剰に発現し、p53とPD-L1は相関を示すと考えられる。
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