研究課題/領域番号 |
16K11700
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
古賀 陽子 東京医科大学, 医学部, 講師 (10392408)
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研究分担者 |
近津 大地 東京医科大学, 医学部, 教授 (30343122)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 歯髄幹細胞 / 骨芽細胞誘導 / 三次元的骨再生 |
研究実績の概要 |
【目的】応募者らがこれまでに見出してきた骨形成シグナルに関する基礎的知見と骨形成低分子化合物群に関する知識を集約させ、さらに発展・融合させることで、我々の日常診療において遭遇する抜去歯からのヒト歯髄幹細胞をソースとした高効率な骨芽細胞への分化誘導を行い、採取が容易である自家細胞を用いた新たな三次元骨再生医療戦略へとつなげることが本研究の目的である。ヒト歯髄幹細胞の高効率な骨芽細胞への誘導法の開発とその分子メカニズムの探求、生体内への応用のための適切な担体の選択と検証までを包括的に行うことで、安全かつ効率的なヒト歯髄幹細胞による歯槽骨を含む骨再生医療のための基礎技術を開発したいと考えている。 【方法・結果】1. ヒト歯髄由来幹細胞の高効率的・安定的な骨分化法の開発:骨髄間葉系幹細胞にて骨芽細胞へと分化誘導が報告されている低分子化合物、ヘリオキサンチン誘導体(TH)) を使用することにより高効率かつ、安価で安全性の高いヒト歯髄幹細胞の骨芽細胞分化誘導法が確立できると仮定して、THによる誘導期間・濃度(10-8~10-5M)を含めて検討し、歯髄幹細胞における骨芽細胞誘導条件の最適化を検討した。その結果、アルカリフォスファターゼ(ALP)染色、リアルタイムPCRにより、至適濃度は、10-6M であることが分かった。さらに、TH添加によりALP,ColI、Osteocalcinなどの骨芽細胞マーカーの発現の有意な上昇を認めた。 2. ヒト歯髄幹細胞由来骨芽細胞の三次元培養法の確立 1で得られたヒト歯髄幹細胞由来骨芽細胞を三次元培養へと導き、移植片の作製を開始した。三次元培養には、シート培養を用いた。シート培養には温度応答性培養皿(Up Cell®)を用いてヒト歯髄由来骨芽細胞シートを作成した。 今後は、さらなる検討を行ってより安定した三次元骨再生法の開発を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに報告があるヒト歯髄幹細胞からの骨芽細胞誘導法よりもヘリオキサンチン誘導体(TH)) を使用することにより高効率かつ、安価で安全性の高いヒト歯髄幹細胞の骨芽細胞分化誘導法が確立できた。研究立案当初は、テトラポット型α-TCP微小人工骨を用いて三次元培養を行うこととしていたが、シート状培養を積層させ三次元培養を行うことに成功した。 よって、計画通りに研究が遂行できている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、ヒト歯髄幹細胞由来骨芽細胞シートを積層し、下記研究を行う予定である。 ①免疫不全マウスの頭頂骨臨界骨欠損モデルを用いた移植実験および骨分化誘導の確認、評価 免疫不全マウスを用いて、マウス頭頂骨臨界骨欠損モデルを作製する。このモデルは、単純な骨欠損形態での骨再生の評価に利用され、骨再生能の基礎的な評価にも適している。応募者らは、先行研究に基づき、直径4mmの全層欠損がマウス頭頂骨における臨界骨欠損となりうることをすでに確認し報告している(FASEB J, 2007, Mol Ther, 2007)。このモデルを用いて歯髄由来骨芽細胞とテトラポット型α-TCP型微小人工骨との三次元骨移植片の骨再生誘導に関する基礎的な知見を得る。移植後、4、6、8週の時点でマイクロCTによる3次元的な画像評価を行う。さらに、組織切片を作製し、HE染色、各種骨基質タンパク質(Ⅰ型コラーゲン、オステオポンチン、オステオカルシンなど)に対する免疫染色、in situ hybridizationによる骨芽細胞分化に重要な転写遺伝子(Runx2, osterixなど)の発現解析も行い骨再生を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
一時期、細胞のコンタミネーションが続き、一度細胞をリセットしたため、実験ができない時があった。そのため、研究費の使用が減ったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度からは、in vivo実験が控えているため、免疫不全ラット、マウス(約1万円/匹)に当初の予定より経費がかさむと見込んでいる。その補填として次年度使用顎を使用予定である。
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