研究実績の概要 |
培養ヒト顎関節滑膜細胞(滑膜細胞)に30 kDまたは120kDaのフィブロネクチン分解産物(FN-F)を作用させ,分解産物間での作用の違いを検討した。また,滑膜細胞120 kDaフィブロネクチン分解産物を作用させ,経時的遺伝子発現解析を行った。シグナル伝達経路の検討も行った。【方法】本学倫理委員会の指針に従い,顎関節内障患者滑膜から out growth法で滑膜細胞を得た.滑膜細胞に30 kDaまたは120 kDaのFN-Fを作用させた。RNeasy Mini kitを用いてtotal RNAを抽出した。網羅的遺伝子発現解析は,Agilent SurePrint G3 HG Expression 8x60K v2 Microarrayおよび発現解析ソフトGeneSpringを用いた。タンパク質量は ELISA kit,シグナル伝達経路検討はキナーゼ阻害薬を用いた。【結果および考察】6時間FN-F作用滑膜細胞のマイクロアレイ解析の結果,約45,000遺伝子中30 kDa FN-Fでは3,768遺伝子,120 kDa FN-Fでは5,517遺伝子が発現変動した。いずれでも発現変動しているのは2,150遺伝子であった。発現上昇率上位には,30 kDa FN-Fではlnc-RNA,120 kDa FN-Fではモカイン遺伝子が多く認められた。次に,120 kDa FN-Fを4, 8, 12時間作用させ,滑膜細胞の経時的遺伝子発現変動を調べたところ,経時的に発現変動した遺伝子が多かった。CXCL-2, -3は作用8時間が最も上昇した。30 kDaまたは120 kDa FN-Fは、NFκBを活性化することによってケモカインやIL-6発現を上昇させることが示唆された。以上の結果から,フィブロネクチン分解産物が顎関節の炎症亢進に関与している可能性が示唆された。
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