研究課題/領域番号 |
16K11707
|
研究機関 | 神奈川歯科大学 |
研究代表者 |
前畑 洋次郎 神奈川歯科大学, 大学院歯学研究科, 特任講師 (80410009)
|
研究分担者 |
畑 隆一郎 神奈川歯科大学, 大学院歯学研究科, 特任教授 (10014276)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 口腔癌 / 分子標的治療薬 / CXCL14 (BRAK) / EGF受容体 |
研究実績の概要 |
口腔扁平上皮癌細胞 (HNSCC) において,天然成分由来の脂肪族アセトゲニン(AA)は上皮成長因子受容体(EGFR)シグナル(EGFR-Ras-Raf-MEK-ERK)の阻害作用を持つことが報告されている。近年,口腔癌の治療においてEGFのEGFR結合阻害によりEGFシグナルを阻害する分子標的薬(セツキシマブ)が用いられるなど,その有用性や安全性が評価されている。しかし,セツキシマブは抗体薬であるために,インフュージョンリアクション(輸注反応)を生じる可能性があることや経口投与が不可能など改善余地も指摘されている。本研究課題では,重篤な副作用が無く, EGFRシグナル活性化阻害作用をもつAAを用いて抗腫瘍因子BRAKの遺伝子発現を回復させ,HNSCCに対しての経口投与可能な新規口腔癌治療薬の開発を目的としている。 平成28年度は,EGFRの発現が確認されている3種類の異なるHNSCCを用いて,AAのEGFシグナル阻害作用およびBRAKの発現回復作用を検討した。実験内容はHNSCCに種々の濃度のAAを前処理し,その後EGFを添加し経時的に細胞を回収した。さらに,回収した細胞からtRNAおよびタンパク質を精製し,EGFシグナルの阻害作用をWestern Blot 法で,BRAKの発現回復作用をqPCR法で検討した。その結果,細胞障害性を生じない最大濃度でAAを前処理した場合においても,EGFシグナル抑制作用およびBRAKの発現回復作用を示す傾向は確認されたが,統計学的な有意差は認められなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年度の研究結果から,HNSCCにおいて細胞障害性を示さない最大濃度のAA前処理を行ったサンプルにおいても,EGFシグナル阻害作用,およびBRAK発現回復作用の傾向は確認されたが,これらの有意な作用は認められなかった。 そこで,同様にEGFRシグナル阻害作用を持つ様々な天然由来成分のEGFシグナル阻害作用およびBRAK発現回復作用を検討し,最も効果の高いものを選択する必要が生じたため,初年度終了時の時点で本研究課題の進行状況は当初の計画よりやや遅れていると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究は,重篤な副作用が無く, EGFRシグナル活性化阻害作用をもつAAを用いて抗腫瘍因子BRAKの遺伝子発現を回復させ,HNSCCに対しての経口投与可能な新規口腔癌治療薬の開発を目的として開始した。 しかし,平成28年度の研究結果から,HNSCCにおいて,細胞障害性を示さない最大濃度のAA前処理を行った場合でも,EGFRシグナル阻害作用およびBRAKの発現作用の傾向は確認されたものの,統計学的有意差が認められなかった。この時点で当初の研究計画に従って本研究課題を次年度以降継続すると,最終年的に動物実験に移行した場合に顕著な研究結果が得れないことが想定された、そこで,同様にEGFRシグナル阻害作用を持つ様々な天然由来成分のEGFシグナル阻害作用およびBRAK発現回復作用を検討し最も効果の高いものを検索した。予備実験の結果,EGFRのリン酸化抑制およびERKの活性化をそれぞれ有意に抑制する天然由来成分を特定することができた。また,その際にBRAKの発現を検討したところ,有意なBRAK発現回復作用が認められた。 そこで,平成29年度は昨年度特定された天然由来成分を用いて,当初の研究計画を一部改変して研究を継続する。本年度は,HNSCCのうちEGFRが高発現している細胞,および下流分子であるKRAS変異細胞[G12V]を作成する。そして,昨年度の実験と同様に種々の濃度で前処理した後にEGFを添加し,経時的に細胞を回収する。そして,これらの細胞から抽出されたタンパク質,tRNAを用いてEGFRシグナル阻害作用をWestern Blot 法 にて検討する。さらにqPCR法を用いてBRAKの発現作用を検討する。さらに,上記の実験が予定より早く終了した場合は平成30年度の予備実験として,投与方法の確立と血中および各臓器への分布を解析する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度の所要額は申請時のカタログ・値段表より算出した金額である。購入時期(予定外のキャンペーンなど)や購入数で金額が申請時より低い支出があり未使用金を生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
本年度は昨年度と類似した研究を再検討する実験計画に変更されているため,昨年度購入した試薬で不足したものを補充するために使用する予定である。
|