研究実績の概要 |
本研究では,EGFRシグナル阻害作用をもつ脂肪酸アセトゲニン(AA)の口腔癌における多段階癌抑制因子であるCXCL14/BRAKの発現促進作用を検討し,口腔癌治療薬に応用するための機序や有用性の検討を目的に研究を行った。その結果,AAのBRAK発現促進作用に有意差が認められ無かったため,より効率的なBRAK発現促進機構の解明と促進物質のスクリーニングに主眼をおき研究を行った。昨年度までの研究では,種々のBRAK発現レベルを持つ口腔癌細胞および口腔癌幹細胞を用いて,BRAKの発現レベルと幹細胞因子の発現レベルの関係について検討した。その結果,口腔癌細胞株であるHSC-3MOCK 細胞および,BRAKの強制発現細胞であるHSC-3-BRAK細胞を種々の細胞密度で培養し,遺伝子の発現をRT-PC法で検討したところHSC-3-BRAK細胞では癌幹細胞マーカーCD44v3, CD44v6, CD44v9および幹細胞因子NANOG,KLF4,OCT4の遺伝子発現が低下していた。一方,正常細胞でも発現しているCD44standardの発現レベルには差が認められなかった。さらに正常細胞としてiPS細胞と比較したところ,NANOG,KLF4,OCT4は高発現していたが,CD44v3, CD44v6, CD44v9の発現はほぼ検出されなかった。これらの結果から,HSC-3細胞においてBRAKの発現は癌細胞の癌幹細胞因子,幹細胞因子の発現を抑制ないし癌幹細胞の数を減少させている可能性が考えられた。平成30年度は,口腔癌細胞および口腔癌幹細胞におけるより詳細なBRAK発現機構の解明とその機序を応用した促進物質のスクリーニングを進めていく予定である。
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