研究実績の概要 |
【背景】スフィンゴミエリン(SM)は細胞膜の重要な構成成分であり、脂質マイクロドメインと呼ばれるコレステロールに富む領域を形成している。脂質マイクロドメインには増殖因子受容体や細胞内シグナル伝達分子などが局在し、様々な細胞生理活性に関与している。SMの合成を触媒するスフィンゴミエリン合成酵素(SMS)にはSMS1とSMS2があり、SMS1はゴルジ体に、SMS2はゴルジ体と形質膜に存在するが、それぞれの生理的な機能については十分に解明されていない。SMSが骨芽細胞の石灰化領域や骨細胞に発現することから、骨格形成におけるSMSの機能を解析する目的でSMS1あるいはSMS2ノックアウトマウスを作製したところ、SMS1ノックアウトマウスは野生型に比べて体格的に小柄で、原因不詳であるが生後半年以内にほとんどのマウスは死亡し、また雄マウスは不妊であった。 【方法および結果】先ず、SMS2ノックアウトマウスをバックグランドに、骨芽細胞特異的にSMS1がノックアウトされたSP7 (Osterix)-Cre; SMS1flo/flo,SMS2-/-マウスを作製して解析を行った。SP7-Cre; SMS1flo/flo,SMS2-/-マウスは野生型やSMS1flo/flo,SMS2-/-マウスと比較して体が小さく、成長障害が認められた。また骨の組織形態解析を行ったところ骨密度が低下した骨粗鬆症様の病態を示していた。そのメカニズムを解析するために、Rosa-CreER, SMS1flo/flo,SMS2-/-マウス頭蓋骨から採取した骨芽細胞を4-hydroxy tamoxifen (4-OHT)で処理を行うことで、in vitroにおいてSMS1をノックアウトさせる系を用いて骨芽細胞の分化について解析を行った。その結果、骨芽細胞のSMS1がノックアウトされると、骨芽細胞の分化が抑制されることを確認した。
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