研究実績の概要 |
本研究の目的は、口腔扁平上皮癌細胞の増殖に重要な役割を果たすと考えられる容積感受性Cl-チャネル(VRAC)の分子実体および増殖制御機構を解明すること、さらに、VRACと陽イオンチャネル(TRPチャネル)や水チャネルとの相互作用の全容解明を目指ことである。これらの分子機序を解明することにより、新たな分子標的を発見し、確実で安全な癌治療(薬)の開発を目指す。 これまで、TMEM16A、LRRC8A及びbestrophin1(BEST1)が容積感受性クロライドチャネルの分子実体の候補と考えられてきたが、口腔扁平上皮癌細胞(HST-1及びHSC3)においては、TMEM16AとLRRC8Aの相互作用により容積感受性クロライド電流を制御していること、この容積感受性クロライドチャネルが細胞増殖に関与していること、容積感受性クロライドチャネルの選択的阻害薬であるDCPIBの投与により、アポトーシスが引き起こされること、本現象に対しBEST1は関与していないことを各種実験方法(パッチクランプ法、RT-PCR法、ウエスタンブロット、免疫沈降、In situ Proximity Ligation Assay(PLA)システム、フローサイトメトリー、WST-8を用いたセルカウント等)により明らかにしてきた。 一方、TMEM16Aと各種TRPチャネル複合体形成についての実験については、RT-PCRにより、TMEM16Aと複合体を形成すると考えらえているTRPC1, V4, M7, P1, P2のいずれの遺伝子の発現が認められたものの、免疫沈降やPLAシステムにより複合体形成は確認できなかった。さらに、DNAアレイによる各種頭頸部癌における遺伝子の発現(TMEM16A、LRRC8Aおよびbestrophin 1)についての調査については、現在遂行中である。
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