研究実績の概要 |
放射線が唾液腺の分化・増殖に及ぼす生物学的変化の解析 i) 唾液腺器官培養:マウス胎子の唾液腺原基を摘出し,2種類の外植片(①顎下腺原基と舌下腺原基を含んだもの②それらに舌筋の一部を含んだもの)を作製した.器官培養を行いながら,1日おきに唾液腺小葉の形成数(分枝形成数)を計測した.その結果,培養開始4日には外植片①の分枝形成数はほぼプラトーに達し、培養開始日と比較しておよそ10倍となった.一方、外植片②では、分枝形成数の増加は顕著で、培養開始4日でおよそ40倍の分枝形成が認められ、その増加のプラトーには達しなかった.外植片①と②間の分枝形成数に、統計学的有意差を認めた. ii) 放射線照射量を決定 0, 1.0, 5.0, 10Gyの4段階に分けて2種類の唾液腺器官培養組織に単照射し、分枝形成数の測定を行った.外植片①では 0Gy, 1.0Gy照射では分枝形成数はほぼ同数で、放射線照射の影響は認めなかった.5.0Gy照射では分枝形成数は減少を示し、約半減した,10Gy照射では分枝形成数はほとんど増加しなかった.一方,外植片②では 0Gy, 1.0Gy, 5.0Gy照射では分枝形成数はほぼ同数で、放射線照射の影響は認めなかった.10Gy照射においても、およそ2倍の分枝形成数の増加を認めた.5.0Gy照射群において、外植片①と②間の分枝形成数に、統計学的有意差を認めた.このように外植片②では放射線照射による影響が少なくなっており、舌筋から放出される成長因子などにより,唾液腺としての機能障害を受けにくい可能性が示唆された.
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