研究課題/領域番号 |
16K11715
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
宮腰 昌明 北海道大学, 大学病院, 助教 (90614933)
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研究分担者 |
北川 善政 北海道大学, 歯学研究院, 教授 (00224957)
佐藤 淳 北海道大学, 歯学研究院, 講師 (60319069)
秦 浩信 独立行政法人国立病院機構北海道がんセンター(臨床研究部), 臨床研究部, 歯科口腔外科医師 (70450830)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 低酸素 / 転移 / 口腔がん |
研究実績の概要 |
癌細胞は非常に高い増殖活性を示し、その必要エネルギーは高度に亢進した代謝活性により維持されている。この機構には腫瘍特異的な低酸素環境下における転写因子HIF1活性化による糖代謝亢進が深く関与していると理解され、増殖活性が高い腫瘍ほど中心部に低酸素領域を生じるとされてきた。 しかし、臨床において非常に高い代謝活性を示す腫瘍組織においても低酸素領域が検出されないという乖離が散見されていた。先行研究において高率に検出される腫瘍組織中のHIF1発現パターンは腫瘍組織中に想定される酸素濃度勾配と関連性は低く、逆に増殖活性との非常に強い関連が示唆されていた。治療応用を念頭に腫瘍組織中のHIF1高発現における分子生物学的メカニズムの解明を目的に本研究を開始した。 研究全体を支える根本的な現象論を確立することを優先したため、当初計画した動物実験への移行を断念し、臨床研究を主体として研究を進めた。 先行研究に準じ、蓄積されていたFDG-PET、FMISO-PET撮影症例につき、保存されていた病理標本中の2000個を超えるリンパ節標本を検証。75個の転移陽性リンパ節を対象に組織染色し転移病巣におけるHIF1発現、上流シグナルの活性化状態、周囲組織中の微小血管構築についても検討を加えた。 結果、転移腫瘍病巣における腫瘍特異的なHIF1高発現は常圧酸素環境下における現象であり、腫瘍組織特異的な酸素要求度の相違に起因する相対的な低酸素状態でも説明できない発現パターンであることを究明し、腫瘍特異的なシグナルトランスダクション経路の異常活性化により制御される低酸素非依存的なHIF1活性化であることが強く示唆された。本検討結果はこれまで臨床病理組織における報告例の無い現象であり、その新規性から現在、公表にむけての準備中である。
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