研究課題
本研究は、先行的に確かめられてきたSlit/Roboシグナルが、口腔がんの発生、進展のメカニズムにおいても重要な役割を担っているとの作業仮説に基づき、まだ明らかとなっていない口腔扁平上皮癌に対するSlit/Roboシグナルの系統的解析と、ヒト検体を用いたSlit、Roboの発現状況についての基盤データの蓄積を目的とし、早期口腔癌のバイオマーカー候補となり得るかを検証するものとして計画された。我々は口腔扁平上皮癌に関するRobo1の発現検討を進めるため、本研究を行う前段階として、学内倫理委員会の審査承認を得て(審査番号10557-(1))臨床研究に着手していた。共同研究者である浜窪博士らが独自に作製した、特異性の高い抗Robo1抗体を所有しており、口腔扁平上皮癌の手術や生検時に採取した臨床検体を用いて、Robo1が特異的に高発現するか否かについて免疫組織学的検討を行った。また、ヒト由来口腔扁平上皮癌患者から樹立された細胞株HSQ89, HO-1-u-1, Sa3, SASを用いてqRT-PCRやシークエンス解析、タンパク発現はウエスタンブロット、フローサイトメトリー、免疫染色で検討を遂行した。さらにHSQ-89細胞株を用いてSlit誘導による遊走能の検証を行い、mRNAはいずれの細胞株も発現を認めることを確認した。一方、タンパク質レベルで発現するHSQ-89, HO-1u-1、Sa3細胞株のうち、HSQ-89細胞株について、Slit誘導による遊走能を確認するなどを行った。最後に、口腔癌患者の検体によるLC-MS/MSによるプロテオーム解析まで行った。悪性度によって発現様式が異なることを示唆する所見も認め、多段階にわたる発癌過程において、Slit/Roboシグナルの一律ではない調節機構が存在し、環境によって下流の伝達経路が異なるのではないかと考えている。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (2件)
J Oncol
巻: 2020 ページ: 9593516
10.1155/2020/9593516.
Tissue Eng Part A
巻: 0 ページ: in press
10.1089/ten.TEA.2019.0185.
BMC Cancer
巻: 19 ページ: 52
10.1186/s12885-019-5277-1.
Regen Ther
巻: 11 ページ: 199-206
10.1016/j.reth.2019.07.006.
Oral Science International
巻: 16 ページ: 100-105
Hospital Dentistry & Oral-Maxillofacial Surgery
巻: 31 ページ: in press