研究実績の概要 |
日本における口腔癌の罹患者は1975年には2,100人,2005年には6,900人であったが、全癌の約1%を占めると推定されている。高齢化社会の到来とともに癌罹患 数は増加している。口腔癌においても同様であり、2015年には7,800人になると予測されている。口腔癌の9割の組織系は扁平上皮癌(Oral Sqamous Cell Carinoma:OSCC)であり、口腔癌の中では舌癌が最も多い。口腔は消化器系の入り口として,喫煙や飲酒、食物などによる化学的刺激に曝露され、また齲歯や不良 な歯科補綴物による機械的刺激があり、発癌にかかわる特殊な環境と危険因子が複数存在することが特徴である。口腔癌患者には同時性あるいは異時性に重複癌 が発生することがある。口腔癌を含む頭頸部癌患者における重複癌の60~70%は上部消化管または肺に認められる。口腔癌を含め、頭頸部癌患者における重複癌 の特徴として、最近20年間に発生頻度が急激に増加しており、近隣領域に第2癌が発生することが多くまた頭頸部癌の治療後に第2癌が発生することが多い。上部 消化管癌と重複することが多いことの説明として、1953年にSlaughteらが口腔癌の研究から提唱した概念で,咽頭、食道、胃は、同一の発癌環境にあるとされ、 共通の癌誘発因子の長期的な暴露によって複数の領域にまたがって広く発癌する現象をさす、field cancerization の概念が挙げられる。また、口腔癌の重複癌 の背景因子には、性、生活習慣、過度の喫煙と飲酒が挙げられる。食道癌も口腔癌同様に9割の組織系は扁平上皮癌(Esophugus Sqamous Cell Carinoma:ESCC)と されていて双方ともに扁平上皮由来の悪性腫瘍であり、同一個体から検出された重複癌同志の遺伝子レベルでの変化など興味深い。 口腔・咽頭領域の研究の一貫として「馬蹄形骨切り併用Le Fort I型骨切り術のための上顎骨の解剖学的検討」として学会発表を行い学会賞を受賞した。(第28回日本顎変形症学会 2018年 6月)
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