研究課題/領域番号 |
16K11718
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
道川 千絵子 東京医科歯科大学, 歯学部附属病院, 非常勤講師 (00622648)
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研究分担者 |
鵜澤 成一 東京医科歯科大学, 歯学部附属病院, 講師 (30345285)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 被膜外浸潤 / RTOG / 頭頸部癌 / 臨床試験 / 扁平上皮癌 |
研究実績の概要 |
現在、頭頸部癌患者において、頸部リンパ節転移巣における被膜外浸潤陽性症例のみ、もしくは、被膜外浸潤および切除断端陽性症例に対して、術後に3週間毎の高用量シスプラチン単剤を用いた化学放射線同時併用療法を施行することが世界標準治療とされている。しかし、重篤な副作用の軽減、および、さらなる生存率改善が必要であり、新たな標準治療の開発が望まれる。用量の調整、および、他剤、ないし、分子標的薬との併用療法などが模索されているが、その1つに、2004年以降、行われた第2相試験があげられる。ここでは、低用量シスプラチンおよび分子標的治療薬であるセツキシマブに放射線を組み合わせた群と、低用量ドセタキセルおよびセツキシマブに放射線を組み合わせた群の比較を行った。この結果、両群ともに従来の高用量シスプラチン単剤併用放射線療法よりも生存率の改善および、副作用の減少が認められ、特に、ドセタキセルを用いた群は、遠隔転移の減少による明らかな生存率の改善が得られたと報告している(J Clinical Oncol. 2014)。一方、近年、癌ゲノム・アトラス(The Cancer Genome Atlas: TCGA)をはじめとする癌の分子的機序の解明を目指す包括的プロジェクトにより、頭頸部癌の分子的および臨床的な特徴についての包括的な解析が報告されている。そこで、上記第2相試験の対象患者のうち、可能であった172症例の臨床検体に対して頭頸部癌において高頻度で変異が見られる遺伝子の変異状況と患者の生存率、被膜外浸潤、および、術後治療法との関連性を検索することを目的とし、ゲノムDNA抽出をスタートさせた。今後、遺伝子変異解析を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
過年度よりおこなっている口腔癌頸部リンパ節転移巣における被膜外浸潤の病理組織学的・形態学的詳細検索に関しては現在までの症例数で有用な結果が得られた。また、被膜外浸潤陽性症例における原発巣・転移巣に関しての遺伝子変異検索に関してpreliminary dataが得られ、現在、このdataの理解をしている最中である。また、被膜外浸潤陽性症例に対する術後治療に関する臨床試験対象患者の検体を用い、遺伝子変異解析に着手できているため。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、過年度よりおこなっている口腔癌頸部リンパ節転移巣における被膜外浸潤陽性症例における原発巣・転移巣に対する遺伝子変異検索のpreliminary dataの理解を目指す。そして、現在スタートさせた、切除可能な進行頭頸部癌患者に対する臨床試験検体を用いた解析の結果を確認し、遺伝子の変異状況と患者の生存率、被膜外浸潤、および、術後治療法との関連性を解析する。その後、現在までに得られている口腔癌患者の不良な経過、および、被膜外浸潤に関連した遺伝子変異状況に関するpreliminary dataとの整合性を確認した後、さらなる戦略を考える。最終目標は、被膜外浸潤を生じる患者の術前選択と術後治療方針の選択である。
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次年度使用額が生じた理由 |
過年度よりおこなっている研究に一区切りつけ、現在、別の対象症例に関して臨床検体からのゲノムDNA抽出をスタートさせたばかりである。これは、172検体と数が多く、また、今後、DNAの品質チェックおよび遺伝子変異解析が必要である。
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次年度使用額の使用計画 |
ゲノムDNA抽出、および、品質チェックを行った後、次世代シーケンサーを用いて遺伝子変異解析を行う。解析結果は、国際学会での発表を予定している。
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