研究課題/領域番号 |
16K11719
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研究機関 | 鶴見大学 |
研究代表者 |
佐久間 朋美 鶴見大学, 歯学部, 学部助手 (70633733)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | Ciz / 骨転移 / 遊走性 / RANKL / 口腔癌 / 悪性黒色腫 |
研究実績の概要 |
本研究はCiz(Cas Interacting Zinc Finger Protein)発現が寄与する事実を検証しCiz-RANK(NFkB 活性化受容体リガンド)関係シグナルの分子機序を解明することで、腫瘍遠隔転移、特に骨転移に関する新たなメカニズムを解明し、骨転移の予防や治療のための新たな創薬の標的開発・同定を目的としている。 初年度は、これまでの研究結果である悪性黒色腫細胞株B16と、B16よりも転移能が高い悪性黒色腫細胞株B16F10と比較から、悪性黒色腫細胞の遊走性と接着性およびRANKLに対する応答性などにおけるCizの役割について再検証し、過去の報告とほぼ相違ない結果を得ることが出来た。 2年目より、様々な腫瘍細胞(乳がん細胞、肺がん細胞、前立腺がん細胞)においてCizの発現量についてRNAレベルおよびタンパク質レベルにおいて解析し、悪性度の違う悪性黒色腫細胞と同様の違いが結果として得られるかについての実験を進めた。タンパク質レベルについての解析について安定した結果が得られず、実験方法についてその方法を再考する必要がある。悪性黒色腫細胞株B16とB16F10における腫瘍関連遺伝子の発現量をマイクロアレイで比較する予定であったが、現在のところ行えていない。CizはRas / MEK / MAPK経路を介した細胞骨格制御や生存維持への関与が推定されるが、Cizノックダウン細胞およびCiz強制発現細胞におけるERK1/2、MAPK、p130cas、リン酸化p130casのタンパク量レベルをウェスタンブロテッィング法により解析し、Ciz発現による影響を明らかにしようとするも、安定した結果が得られていない。また細胞の接着及び遊走性について再度着目し、腫瘍細胞接着面における遊走ステージに応じたポドソームの発現の経時的変化について解析を進めてきたが、結果は得られていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
勤務先の異動により、研究環境が大きく変化した。これまで使用していたノックアウトマウスの飼育が不調になり、必要な形質のマウスを得るのが非常に困難になった。約半年を要して、マウスの飼育環境を安定することが出来たが、研究に使用するための十分なマウスを得るには至っていない。 また、臨床業務の割合が増幅し、研究にさけるエフォートの割合が減少した。個人的にも子育ての負荷が増加し、全体的に研究への集中が低下してしまったことが、研究の遅れにつながっていると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
1年間延長して研究を継続する機会を得ることが出来た。 残りの研究期間が短いことから、今年度は本研究の最重要ポイントの一つである「Ciz-RANK(NFkB 活性化受容体リガンド)関係シグナルの分子機序を解明」することを主眼において研究を進めたいと考えている。特に癌の骨転移において、腫瘍細胞から産生されるPTHrP、IL-6などは、宿主の間質細胞に作用して「NFkB活性化受容体リガンド」(RANKL)を活性化させて、骨吸収を促進する。実際に、腫瘍細胞の遊走性と骨転移がRANKLにより促進される(Jones, D, et.al. nature, 2006)ことが報告されているが、このPTHrP、IL-6とCizとのかかわりおよびRANKとCizのかかわりにターゲットを絞って実験を行いたいと計画している。中でも悪性黒色腫細胞の遊走性と接着性およびRANKLに対する応答性などにおけるCizの役割は報告した通りであるので、今後は腫瘍細胞を骨転移において最も頻度の高い、乳がん細胞に変更して解析していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
極力、研究室で使用可能な物品や薬品を使用することで、当初予定していた出費を抑えることが出来た。また、実験解析機器についても同様に他分野との共同使用をすることが出来た為、支出を抑えることができた。 今回、次年度に持ち越すにあたり、再度予算内容を組みなおし、Cizの抑制抗体をよりターゲットを絞って購入することを予定している。また、研究スピードを上げるために一部実験を学内外部委託をすることも検討している。
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