本研究はCiz(Cas Interacting Zinc Finger Protein)が寄与する事実を検証しCiz-RANK(NFkB 活性化受容体リガンド)関係シグナルの分子機序を解明して、腫瘍遠隔転移、特に骨転移に関するメカニズムを解明し、創薬の標的開発・同定を目的とした。 腫瘍細胞の悪性度の違いと、Ciz発現量の関連を悪性黒色腫のみならず他の細胞でも検証することにより、腫瘍細胞の骨転移のメカニズムの要所の一つである、細胞の遊走性と接着性におけるメカニズムを解明する知見を示した。また、新規ターゲットとして腫瘍細胞の悪性度に応じたポドソームの発現変化の検証は今後本研究の意義を興味深いものにしていけると考える。 悪性黒色腫細胞株B16とB16より転移能が高い悪性黒色腫細胞株B16F10と比較から、悪性黒色腫細胞の遊走性と接着性およびRANKLに対する応答性におけるCizの役割について再検証し、過去の報告と相違ない結果を得た。また、様々な腫瘍細胞におけるCiz発現量をRNAおよびタンパク質レベルにおいて解析し、悪性度の違う悪性黒色腫細胞と同様の違いが結果として得られるか実験を進めた。途中、タンパク質レベルについての解析について安定した結果が得られず、実験方法について再考を余儀なくされた。CizはRas/MEK/ MAPK経路を介した細胞骨格制御や生存維持への関与が推定されるが、Cizノックダウン細胞およびCiz強制発現細胞におけるERK1/2、MAPK、p130cas、リン酸化p130casのタンパク量レベルをウェスタンブロッティング法により解析し、Ciz発現による影響を明らかにした。さらなる追加情報を得て確実な解析を行いたい。細胞の接着及び遊走性について再度着目し、腫瘍細胞接着面の遊走ステージに応じたポドソーム発現の経時的変化について解析し、興味深いデータを得た。
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