研究課題/領域番号 |
16K11722
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
村上 純 岡山大学, 大学病院, 助教 (40362983)
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研究分担者 |
岡田 俊輔 岡山大学, 大学病院, 助教 (00759681)
竹中 文章 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (10642522)
江口 傑徳 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (20457229)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 口腔癌 |
研究実績の概要 |
抗EGFRモノクローナル抗体であるセツキシマブは、癌細胞のEGFRと結合することで抗癌作用を示す有用な抗癌薬であるが、セツキシマブ耐性症例が報告されている。近年、癌細胞が放出する細胞外小胞(EV)が抗癌剤耐性に関与することが明らかとなってきたが、口腔癌の放出するEGFR含有細胞外小胞(EGFR-EV)とセツキシマブの関連性についての報告はほとんどない。そこで、口腔癌細胞株HSC-3が放出するEGFR-EVがセツキシマブ排出に関与している可能性を考え、HSC-3が放出するEVとセツキシマブの関連性について研究を行った。 HSC-3を無血清培地で培養し、EGFおよびセツキシマブを添加した条件で行った。上記の培養上清からEV抽出試薬を用いてEVを回収し、回収したEVを粒子径分布解析、電子顕微鏡解析およびウェスタンブロッティング(WB)解析により評価した。セツキシマブの抗癌作用に関しては細胞形態変化および悪性性質変化を検討した。粒子径解析では、160nmの範囲に粒子が存在し、電子顕微鏡解析では脂質二重膜に囲まれた球形の粒子が確認でき、EVの定義と一致した。HSC-3ではEGF刺激によりEGFR-EVの放出が促進された。セツキシマブを投与すると、EV放出量に変化は見られず、EV画分にセツキシマブが検出された。細胞形態変化および悪性性質変化が誘導されたHSC-3にセツキシマブを投与すると、細胞形態変化および性質変化は認めず、効果は不完全であった。同条件の上清からEVを回収し、WB解析を行ったところ、EV画分にセツキシマブが検出された。 上記の結果から、HSC-3はEVを介してセツキシマブを排出する可能性が示唆された。本研究は、口腔癌細胞のセツキシマブ排出機序の一部を解明した初めての報告であり、今後の癌治療における臨床応用への手がかりとなる重要な知見を含んだ内容である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
申請者は当該研究以外の業務多忙に加え、動物実験施設移転により動物実験の遅延が生じている。また、2018年にこれまでの研究成果の途中経過を論文にまとめ報告したが、その作成に時間を要したため、研究実施に遅延が生じている。過去の文献を参考にして妥当性が担保された手法で研究を行っており、また、得られた実験データの差も明確であり、信頼性は高い。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で対象とした口腔癌細胞株は1種類のみであるため、他の種類の口腔癌細胞株においても同等な結果が得られるのか検討する必要性がある。また、in vivoおよび患者検体を使用した実験も行っていないため、in vivo実験も検討する必要性がある。EVを媒介とした抗がん剤排出についての具体的なメカニズムも詳細な検討が必要である。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請者は当該研究以外の業務多忙に加え、動物実験施設移転により動物実験の遅延が生じている。また、2018年にこれまでの研究成果の途中経過を論文にまとめ報告したが、その作成に時間を要したため、研究実施に遅延が生じている。
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