研究課題/領域番号 |
16K11724
|
研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
日野 聡史 愛媛大学, 医学部附属病院, 講師 (90359927)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 口腔癌 / 転移 / アポトーシス |
研究実績の概要 |
癌細胞は、アポトーシス/アノイキスへの抵抗性を獲得することで、転移を可能とするという作業仮説に基づきSrcとA20に着目して研究を展開している。さらに、ヒトが本来有しており、強力なアポトーシス誘導能を有するTNF-related apoptosis inducing ligand (TRAIL) は、治療への応用を見据える上で注目されている。Srcの量的、質的変動とTRAILの感受性について検討を行った。 これまでの研究から、口腔扁平上皮癌細胞株SAS(親株)、SAS-T5(高転移能株)、SAS-L1(高転移能株)において、Srcタンパク自体の発現量には明らかな差違が見られなかったが、リン酸化され活性型となった p-Src (Tyr 416) の発現が高転移能細胞株において亢進していることが明らかになった。一方、抑制型となったp-Src (Tyr 527)の発現は、3種の細胞株間で有意な発現差がないことを確認した。すなわち、Srcのキナーゼ活性の上昇が口腔扁平上皮癌細胞の転移能に関与している可能性が示唆された。続いて、Srcのキナーゼ活性を選択的に阻害することが知られるPP2という薬剤を使用して、Srcのキナーゼ活性を抑制した。あるいは、合成siRNAを使用してSrcの発現を特異的にノックダウンした。これらの処理によって、細胞株のTRAIL感受性の変化を検討した。PP2処理によって3種の細胞株すべてにおいて、経時的、濃度依存的に細胞増殖が有意に抑制された。この細胞増殖抑制効果は、活性型Srcを強発現している高転移能細胞において顕著であった。設計した3種のsiRNAはいずれも、Srcの発現を抑制した。Srcの発現抑制は細胞増殖抑制効果を示し、その効果は高転移能株でより顕著であった。また、Srcの発現抑制は高転移能株においてTRAILによるアポトーシス刺激への抵抗性を解除した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
A20発現量とTRAIL感受性の関連について検討ができておらず、その後の動物実験に着手できていないため研究に遅れが生じた。
|
今後の研究の推進方策 |
当初計画の研究内容を遂行すべく、A20の発現抑制がTRAILによるアポトーシス抵抗性の解除に果たす役割について検討を行う。また、研究の標的分子としているPP2AやCIAP2についても解析を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
(理由)研究の遂行が当初案よりも遅れている。特に、動物実験用に計上した費用を中心に未使用となっている。また、研究成果を発表するための学会にも参加できておらす、旅費も未使用である。
(使用計画)研究計画通り、動物実験結果を踏まえて臨床応用の可能性を検討する。また、学会発表も検討する。
|