研究課題/領域番号 |
16K11729
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
宮崎 晃亘 札幌医科大学, 医学部, 准教授 (10305237)
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研究分担者 |
小林 淳一 札幌医科大学, 医学部, 助教 (80404739)
宮本 昇 札幌医科大学, 医学部, 研究員 (80749565)
岡本 準也 札幌医科大学, 医学部, 研究員 (10749592)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | がんペプチドワクチン療法 / がん抗原 / 口腔がん / サバイビン / がん免疫療法 / がん幹細胞 |
研究実績の概要 |
新規がん抗原の分離同定を目的に、口腔がん細胞株OTMと自己の末梢血単核細胞から分離したCD8陽性T細胞を共培養してcytotoxic T lymphocyte (CTL) TcOTMを誘導し、limiting dilution 法によりTcOTM cloneを作製した。TcOTM cloneは自家口腔がん特異的細胞傷害活性を有するのみならず、非自己のHLA-A24陽性口腔がん細胞株OSC-19、HSC-2に対しても高い細胞傷害活性を示したことから、HLA-A24陽性口腔がんに発現している共通抗原を認識していることが示唆された。現在、high-performance liquid chromatography (HPLC)を用いた直接抽出法によりHLA-A24拘束性ペプチドのスペクトラムを測定し、natural antigenic peptide (NAP)の分離同定を試みている。 局所進行・再発口腔がんに対する不完全フロイントアジュバント+インターフェロンαを併用したサバイビン遺伝子産物由来ペプチドの第I/II相臨床試験においては、一部の症例で免疫学的効果のみならず腫瘍縮小効果や腫瘍マーカーの低下などの臨床的効果も得られている。 現在のところ重篤な有害事象は出現していない。 近年、治療効果のより高い複合がん免疫療法の開発と臨床試験が試みられている。がん特異的モノクローナル抗体技術を用いて作製され、ヒトがんタイプのpodoplaninのみを認識するLpMab-23に着目し、有害事象の少ない抗体医薬品としての可能性について免疫組織学的に検討した。その結果、LpMab-23の発現は早期舌扁平上皮癌において、頸部後発リンパ節転移を予測する上で最も強い危険因子であることが示され、バイオマーカーとしての有用性のみならず転移予防の抗体医薬品としての可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新規口腔がん細胞株OTMの樹立にやや時間を要したが、その後は順調に自家口腔がん特異的細胞傷害活性を有するTcOTM cloneのペアを作製し、抗原ペプチドの分離同定を試みている。 サバイビン遺伝子産物由来ペプチドを用いたがんペプチドワクチン療法の臨床試験においては、平成29年度内に予定症例数が満たされず、期間延長を予定している。
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今後の研究の推進方策 |
サバイビン遺伝子産物由来ペプチドを用いたがんペプチドワクチン療法の臨床試験を遂行し、免疫学的効果と臨床効果ならびに有害事象を評価する。 OTM細胞からlysateを作製し、直接抽出法を用いてOTM細胞表面に発現している抗原ペプチドを抽出する。得られた抽出物をHPLCにより精製し、各フラクションについてTcOTMの反応性を検討し、NAPを同定する。同時に患者末梢血から得られるTcOTMの供給には限りがあるため、そのTCRα鎖・β鎖をクローニングして、白血病細胞由来細胞株などの無限増殖が可能な細胞に遺伝子導入することにより人工CTLの樹立と解析を目指し、多方面から抗原ペプチドの分離同定を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度に新規口腔がん細胞株OTMの樹立と自家口腔がん特異的細胞傷害活性を有するTcOTM cloneのペアの作製に時間を要し、HLA class I分子に結合する抗原ペプチドの分離同定など後続の研究にやや遅れが生じているため。 (使用計画) HPLCを用いた抗原ペプチドの同定を主体にCTL cloneのTCR遺伝子導入など多方面から抗原ペプチドの分離同定を試みる予定であり、医薬品、生化学的試薬、抗体・関連キットや細胞培養一般試薬等の消耗品費ならびに国内外の学会での成果発表に充当する。
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