研究課題/領域番号 |
16K11730
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
光藤 健司 横浜市立大学, 医学部, 准教授 (70303641)
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研究分担者 |
佐藤 格 横浜市立大学, 医学研究科, 客員研究員 (00737710)
藤内 祝 横浜市立大学, 医学研究科, 教授 (50172127)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 口腔癌 / Interleukin-6阻害剤 / ハイパーサーミア / ヒト扁平上皮癌細胞株 |
研究実績の概要 |
現在、分子標的薬は癌治療においてその有効性が認められ、世界的に広く研究・開発されている。頭頸部扁平上皮癌においては抗EGFR 抗体(セツキシマブ)が臨床に導入され、その有効性が報告されている。頭頸部癌に対してセツキシマブ以外の分子標的薬による臨床試験も行われている。我々は、リウマチに対する分子標的薬として応用されているサイトカインInterleukin-6(IL-6)阻害薬(抗IL-6R抗体、トシリズマブ, アクテムラ®)が頭頸部扁平上皮癌に対しても抗腫瘍効果を示すことに着目した。さらに、我々が日常臨床で用いている温熱療法(ハイパーサーミア)を併用し、癌標的分子の発現誘導と腫瘍の増殖抑制に対する相乗効果の検討を行う。 研究は3つのステップに分けて行った。まず口腔癌で最も発現率の高い舌扁平上皮癌の細胞株を用い、IL-6阻害薬と温熱療法のそれぞれの単独の機能評価を行った。ヒト由来舌扁平上皮癌細胞株に対するIL-6阻害薬の抗腫瘍効果の評価を行った。同様に、温熱刺激による抗腫瘍効果の評価を行った。次に、温熱刺激によるIL-6の機能に及ぼす影響を評価した。温熱刺激をした口腔癌細胞株を用いて、IL-6の活性化時に起こるシグナルの変化を追うことで、温熱刺激によるIL-6の活性化の有無を評価した。また、IL-6阻害薬刺激と温熱刺激の両者を加えた時のシグナル変化を評価し、タンパクレベルでIL-6活性化の評価を行った。最後に、実際に動物実験で、IL-6阻害薬と温熱療法併用での抗腫瘍効果の相乗効果を検討した。ヒト由来舌扁平上皮癌細胞株をヌードマウスの皮下に移植し腫瘍モデルを作成した。温熱刺激とIL-6阻害薬の併用療法の抗腫瘍効果を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28,29年度はヒト由来舌扁平上皮癌細胞株に対するIL-6 阻害薬の抗腫瘍効果の評価を行った。口腔癌細胞がハイパーサーミアによりIL-1R が高発現することを確認した。本年度は、タンパクレベルでのIL-6阻害薬の作用と温熱刺激によるシグナルの変化を、ウエスタンブロッティングを用いて観察した。培養した口腔癌細胞株の培養液にIL-6を添加し、それらをさらにIL-6阻害薬を添加したサンプルとIL-6阻害薬無添加のサンプルに分けた。2種のサンプルから回収したタンパクを用いて、IL-6の活性化によるシグナル変化を観察した。適切な温熱刺激の条件を決定するために、まず42℃、30分の温熱刺激を加えたときの変化を観察した。IL-6を過剰発現させた状況ではIL-6活性化の下流シグナルであるSTAT3のリン酸化タンパクの発現が観察された。42℃、30分の温熱刺激で、IL-6の発現・活性化が誘導されることが分かった。温熱刺激直後にIL-6阻害薬を添加すると、IL-6の活性化は抑制されたが、完全な阻害には至らなかった。これは、温熱刺激によるIL-6の活性化が起こっていることが原因となっていると考えられる。温熱刺激によるIL-6活性化は刺激直後から起こる変化であり、すぐに収束する。IL-6阻害薬は温熱直後に添加するとIL-6活性化によってその効果が打ち消される可能性があると考えられた。今後も、より適切な条件の検討を行っていく方針である。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度はヒト由来舌扁平上皮癌細胞に対するIL-6 阻害薬のアポトーシス誘導の検討を行う。また、様々な温熱条件でのIL-6活性化や、刺激回数、刺激後からの経過時間による適切なIL-6阻害薬の添加条件を検討する。さらに動物実験においても、適切な温熱刺激の温度や、時間、回数の検討を行う。IL-6阻害薬についてもその抗腫瘍効果の有無を観察する。それらを踏まえて、両者の相乗効果による抗腫瘍効果の増強について検討を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
端数が生じたため30年度に物品費として使用を予定している。
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