研究課題
リウマチに対する分子標的薬として応用されているサイトカインInterleukin-6(IL-6)阻害薬(抗IL-6R抗体、トシリズマブ)が頭頸部扁平上皮癌に対しても抗腫瘍効果を示すと報告されている。今回、がん治療で行われる温熱療法とこの抗IL-6R抗体と併用し、癌標的分子の発現誘導と腫瘍の増殖抑制に対する相乗効果について口腔癌細胞を用いて検討した。平成28,29年度はヒト由来舌扁平上皮癌細胞株に対するIL-6 阻害薬の抗腫瘍効果の評価を行った。口腔癌細胞が温熱療法によりIL-6R が高発現することを確認し、IL-6を過剰発現させた状況ではIL-6活性化の下流シグナルであるSTAT3のリン酸化タンパクの発現が観察された。42℃、30分の温熱刺激で、IL-6の発現・活性化が誘導されることが分かった。温熱刺激直後にIL-6阻害薬を添加すると、IL-6の活性化は抑制されたが、完全な阻害には至らなかった。IL-6阻害薬は温熱直後に添加するとIL-6活性化によってその効果が打ち消される可能性があると考えられた。平成30年は動物実験を行った。ヒト由来舌扁平上皮癌細胞株をヌードマウスの皮下に移植し腫瘍モデルを作成した。実験はコントロール群、IL-6阻害薬投与群、温熱療法単独治療群、IL-6阻害薬投与+温熱療法治療群の計4群で行った。結果はコントロール群に対し、いずれの群でも有意な差を認めなかった。サンプル数が少ないこと、それぞれの群でばらつきが大きいことが原因として挙げられる。また、温熱療法を用いた治療群では腫瘍部にあてた温熱機器の接触に問題が生じた例も見られた。具体的には、温熱機器の接触部が偏り、ごくわずかな範囲に熱が集中したことで過加温となり熱傷を生じた。今後、動物実験のプロトコルを改変する余地があると考えられた。さらに抗IL-6投与のタイミング、投与量についても検討を行う。
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