研究課題/領域番号 |
16K11734
|
研究機関 | 東京歯科大学 |
研究代表者 |
河野 通良 東京歯科大学, 歯学部, 講師 (30403182)
|
研究分担者 |
山上 淳 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (80327618)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 口腔癌 / ドラッグデリバリーシステム |
研究実績の概要 |
本研究では、口腔扁平上皮癌(OSCC)においてデスモグレイン3(Dsg3)が高発現していることから、天疱瘡患者からクローニングされた病原性を持たない抗Dsg3抗体Px44と癌抑制分子TRAIL(TNF-related apoptosis-inducing ligand)をつなげた融合タンパクPx44TRAILを作製し、口腔癌を対象とした選択的治療モデルの開発を目指してきた。口腔癌患者から樹立された40種類のOSCC細胞株のうち、6人の口腔癌患者の原発巣、転移リンパ節に由来する12種類の細胞株を対象として研究を進めた。リアルタイムPCR解析の結果、11種類のOSCC細胞でDsg3の発現が認められ、発現は原発巣より転移リンパ節で高い傾向がみられた。Dsg3を発現しているOSCC細胞ではPx44TRAILが結合し、非特異的抗体にTRAILを結合させた陰性コントロールAM3-13TRAILは結合しないことを確認した。OSCC細胞にPx44TRAILと陰性コントロールAM3-13TRAILを加えて2時間後に洗浄し、16時間後にアポトーシス誘導能を比較したところ、Px44TRAILのみ9種類の細胞にアポトーシスを誘導した。陰性コントロールのAM3-13TRAILではアポトーシスは誘導されなかった。また、Dsg3を発現していないOSCC細胞ではPx44TRAILが結合せず、アポトーシスも誘導されなかった。以上の結果から、Px44TRAIL はDsg3を発現しているOSCC細胞に対してのみ治療効果を発揮することが証明され、in vitroにおいてはPx44-TRAILのOSCCに対する抗原特異的、選択的治療効果が確認できた。これらの結果をまとめて、学会発表を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
口腔癌患者から樹立されたOSCC細胞株に対して、Px44TRAILによる組織特異抗原をターゲットとした選択的治療効果を調べた結果、in vitroの実験系においては効果が確認された。
|
今後の研究の推進方策 |
OSCC細胞株をマウスに移植して形成された腫瘍に対して、Px44TRAILを局所投与、または全身投与することにより、in vivoの条件でPx44TRAILが治療効果を示すかを調べて行く方針である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
in vitroでの実験がほぼ終了し、次年度に予定している、マウスを用いたin vivoでの実験に使用するため。
|
次年度使用額の使用計画 |
マウスを用いたin vivoでのPx44TRAILの治療効果判定実験に使用する予定である。
|