研究課題/領域番号 |
16K11736
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研究機関 | 神奈川歯科大学 |
研究代表者 |
居作 和人 神奈川歯科大学, 大学院歯学研究科, 講師 (90257296)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | CXCL14/BRAK / 癌抑制分子 / 癌幹細胞 / 転写因子 / 分化 |
研究実績の概要 |
癌は発癌、増殖、転移、浸潤など多くの遺伝子変異、活性変異により多段階で進展することが明らかにされている。また、癌細胞では細胞増殖が活発に速く行われるため、細胞が十分に成熟することができず、未熟な細胞である未分化型癌細胞や低分化型癌細胞が見うけられるす。癌は分化度が低い未分化癌や、低分化型癌のほうが、悪性度が高く、転移・再発が多く見られる傾向がある。反対に分化度が高い、高分化型癌は比較的悪性度が低い。我々はCXCL14の癌抑制作用の研究過程で、癌幹細胞を多く含みCXCL14の発現が低い扁平上皮癌細胞にCXCL14遺伝子を導入してCXCL14を発現させると、培養系で扁平上皮の分化マーカーが発現する事、またCXCL14の発現が移植癌の増殖を抑制することを見出した。この事実はCXCL14が癌幹細胞の分化を促進して、癌の異常増殖を抑制する可能性を示している。CXCL14の発現が癌幹細胞の分化を促進して細胞を最終分化させ、結果として癌の進展抑制をする事が示せれば、種々の癌に応用可能な普遍的な癌の抑制法、予防法の開発のつながる可能性がある。そこで29年度はCXCL14の発現量の異なる3種類の細胞(頭頚部扁平上皮癌(HSC-3)細胞、CXCL14の発現量を抑制したHCS-3細胞、CXCL14の発現量を強制上昇させた細胞)を用いて、癌幹細胞の未分化マーカーである、OCT3/4、KLF-4、NANOG、SOX2などの転写因子の発現量を比較検討した。CXCL14の発現を抑制している細胞と強制発現している細胞を比較すると、強制発現している細胞では未分化マーカーが減少していた。つまりCXCL14がOCT3/4、KLF-4、NANOG、SOX2などの転写因子を抑制し、分化誘導をしていることがかんがえられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
29年度は、CXCL14の発現量の異なるレベルの、3種類の頭頚部(扁平上皮癌)細胞(HSC-3)、CXCL14ノックアウトHSC-3細胞、CXCL14強制発現HCS-3細胞を用いてを用いて、細胞培養系 (in vitro)においてCXCL14の発現量、分化マーカーの発現量、および、癌幹細胞マーカーの発現量について比較検討を行った。 結果として、CXCL14の発現量が高いものは、その分かマーカーも高発現した。癌幹細胞のマーカーである、OCT3/4、KLF-4、NANOG、SOX2などの転写因子の発現量は低下した。中でもNANOGの発現量の低下顕著に認められた。これは、CXCL14が未分化な状態を保つ、OCT3/4、KLF-4、NANOG、SOX2などの転写因子の発現を抑制して、癌幹細胞を高分化型癌細胞(悪性度の低い癌細胞)に分化させることが可能であることを示唆するものである。 この結果は、予測されていた結果であり、今後はさらにCXCL14と癌幹細胞の分化について研究を進めていく。
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今後の研究の推進方策 |
29年度の結果を踏まえて30年度はマウスを用いた in VIVO での研究を行う。 マウスにCXCL14の発現量の異なる3種類の細胞(頭頚部扁平上皮癌(HSC-3)細胞、CXCL14の発現量を抑制したHCS-3細胞、CXCL14の発現量を強制上昇させた細胞)をマウスに皮下移植して、経時的にサイズを測定する。3週間から4週間後に腫瘍を摘出して、凍結保存や、ホルマリン固定する。凍結保存したものはRNAを抽出し、Real-Time PCR にて癌幹細胞のマーカーである、OCT3/4、KLF-4、NANOG、SOX2などの転写因子の発現量を遺伝子発現レベルで比較検討する。また、ホルマリン固定したものは免疫組織染色にて、、癌幹細胞のマーカーである、OCT3/4、KLF-4、NANOG、SOX2などの転写因子の発現をタンパク質レベルで比較検討する。 また、上記のマウスを用いた in vivo での研究に ERK inhibitor を併用した研究も行う。ERKの作用を抑制することで増殖を抑えれば、分化に移行するであろうと推測されるので、CXCL14の腫瘍抑制作用との相乗効果が期待される。 これらの研究を行うことにより、CXCL14の発現が癌幹細胞の分化を促進して細胞を最終分化させ、結果として癌の進展抑制をする事が示せれば、種々の癌に応用可能な普遍的な癌の抑制法、予防法の開発のつながる可能性がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ、予定の予算であった。 翌年度分として学会発表時の旅費の一部に充当したい。
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