研究課題/領域番号 |
16K11738
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構九州医療センター(臨床研究センター) |
研究代表者 |
大関 悟 独立行政法人国立病院機構九州医療センター(臨床研究センター), その他部局等, その他 (80117077)
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研究分担者 |
清島 保 九州大学, 歯学研究院, 教授 (20264054)
藤井 慎介 九州大学, 歯学研究院, 助教 (60452786)
和田 裕子 九州大学, 歯学研究院, 助教 (70380706)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 口腔がん / TRPチャネル / Hippoシグナル / 扁平上皮がん |
研究実績の概要 |
本研究では、口腔扁平上皮がん細胞において、Transient receptor potential (TRP)チャネルが機械刺激受容体として微小環境に応答することによりシグナル伝達が活性化することによって腫瘍形成に関与するのか、TRPチャネルシグナル伝達とHippoシグナル伝達が機械刺激を受容し協調的に相互作用することによってがん形成に影響を与えるのか、について検討することを目的としている。平成28年度は以下の研究結果を得た。 ①6種類の口腔扁平上皮がん細胞株における、あるTRPVチャネルのmRNA発現について検討した。最も高く発現している口腔扁平上皮がん細胞株において、siRNAを用いてあるTRPVチャネルをノックダウンしたところ、mRNAおよびタンパクレベルにて発現が抑制した。ウエスタンブロット法にて市販物と私共の作製物の中で最適な抗体について検討すると、私共が作製した抗体が最もバックグランドの低い特異的な抗体であることが明らかとなった。②予備的に舌がん生検標本におけるこのTRPVの発現を前述の抗体を用いて免疫染色にて検討したところ、腫瘍細胞において発現していた。しかし、まだ症例数が少ないため今後検討数を増やす必要がある。③口腔扁平上皮がん細胞株においてこのTRPVをノックダウンしたところ、増殖細胞数および運動能が減少した。また、このTRPVのノックダウンまたは特異的阻害剤を用いた機能阻害を行ったところ、特異的にある細胞内シグナル伝達のリン酸化が減弱した。 これらの結果から、あるTRPVチャネルが口腔扁平上皮がん細胞において発現し、その発現が腫瘍形成に関与することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで口腔扁平上皮がん細胞株におけるTRPVチャネルの発現と腫瘍形成への影響について詳細に解析されていなかった。また、あるTRPVチャネルに対する特異的抗体が入手できず、がん組織における発現について不明であった。平成28年度内の私共の研究結果から、あるTRPVチャネルに対する特異的抗体を自ら作製して入手できた。このため、来年度以降、がん組織における発現について詳細に解析できると予測される。また、あるTRPVチャネルの発現が口腔扁平上皮がん細胞株の腫瘍形成(増殖能・運動能)に関与することが明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
①口腔がん組織におけるTRPVチャネルの発現と臨床病理学的な相関について検討する。具体的には、がん病理組織を用いて、口腔がん組織(舌・歯肉等)における発現を免疫組織化学的に検討する。また、Hippoシグナル伝達の下流増殖因子YAP/TAZについて免疫染色を行い、両陽性、すなわちTRPチャネルとYAP/TAZが核に局在する症例について、その臨床病理学的な相関(がんの分化度、5年生存率、無再発生存期間等)も併せて、計50症例程度ずつ検討する。 ②これまでのところ、がん細胞においてTRPVチャネルが細胞外環境を感知する機械刺激受容体として機能するかは不明である。そこで、TRPVチャネルを高発現する口腔扁平上皮がん細胞株の浮遊培養、二次元培養(プラスチック培養皿)または三次元培養を行う。三次元培養では、コラーゲン、フィブロネクチン、または基底膜タンパク質(マトリゲル)基質中で培養しこれらの硬さを変化させる。がん細胞を基質上や基質内で培養し微小環境が増殖に与える影響ついて検討する。具体的には、shRNAによる恒常的発現抑制細胞株を作成し、これらの細胞株のEduの取り込み効率やKi67陽性細胞数を計測して評価する。これらの結果、TRPVチャネルが細胞外環境を感知するのかを明らかにする。また、シグナル伝達とHippoシグナル伝達の協調を検討する為に、上記の実験系にコントロール群とTRPVチャネル発現抑制群において、YAP/TAZの核移行に与える影響について検討する。またYAP/TAZ下流転写因子Teadの標的遺伝子(CTGFまたはANKRD1等)の発現について検討する
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