顎関節直上の皮膚面にセンサーを設置して、顎運動の際の関節頭の動きを描出した。滑走運動として触診できる関節の外側への突出をきれいに描出できた。一方、回転運動の描出は、設置方法の工夫、センサーの顎関節への圧接法の工夫を行ったが困難であった。人の手で感知できるものはセンサーで感知できるはずとの考えのもと試行錯誤したが、関節頭の外側極はその周囲の側頭骨より内側に位置しているため、フラットパネルである本センサーでは感知困難であった。感度を上げたり、皮膚への圧接法、手技を工夫し、皮膚のわずかな膨らみをも触知しようと試みたがアーチファクトやエラーが目立つだけで期待した結果は得られなかった。 顎変形症の手術では、下顎枝を矢状分割しフリーになった近位骨片切断端をペアンで把持して可動させることが可能であるため、顎関節そのものも自由に位置づけできる特徴を有するため、どの程度可動させれば描出できるか検討を行った。結果、関節結節を超える前方滑走や、大きな回旋運動は描出可能であったが、関節窩内にとどまるわずかな可動での関節頭の描出はやはり困難であった。また、術中の腫脹も加わり困難であった。 ただ、滑走運動は鮮明に描出できたため、顎関節の全運動軸の描出に応用できないかと思案した。外側からかける圧接力を一定にするため、顎関節症学会で提唱している顎関節部測定に用いる500gの荷重を参考にしキャリブレーションを行った。しかし、左右顎関節同時の測定はビュアーの特徴より困難でそれぞれ単独で測定せざるを得なく、また、同点を立体的な座標軸に置き換えることは困難であった。手技による描出の誤差も否めず、外側極を近傍の特定の顆頭点の描出も判然としないため、関節運動の概略は判明するものの精度の高い描出は困難であった。手術の際に応用するためには、パネルの形状の検討が必要であると思われた。
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