本年度は、これまで行ってきた研究成果の分析と論文作成を行った。 1)肺血管の生体内観察と抗白血球抗体による白血球の凝集とは血管外水分量の測定 抗白血球抗体の投与により白血球は肺血管表面に結合し、集積する。直ちに肺胞内の水分量が増加し、肺水腫を形成することが生体内観察により示された。現在、Journal of Intensive Careに投稿中である。2)培養血管内皮層を用いたglycocalyxによる血管透過性の調節機能の検討 HUVEC(Human umbilical vascular endothelial )を用いてglycocalyxを酵素により紹介したモデルを作成し、血管透過性の変化をTEER(Trans Endothelial Electrical Resistance)を用いて分析した。単なるglycocalyxの酵素的な破壊では血管透過性の亢進はみられなかった。しかし、遺伝子解析によりいくつかの炎症反応を開始する遺伝子の誘導が起こっていることが観察された。このことからglycocalyxという構造物自体は血管透過性には大きな影響を与えているのではなく、血管内皮細胞表層にある各受容体の活性化を抑制していることが示唆された。現在、Anesthesia & Analgesiaに投稿中である。3)抗白血球抗体を用いた肺血管透過性亢進におけるマクロファージの役割 抗白血球抗体による肺水腫モデルを作成し、肺血管外水分量の増加及びglycocalyx層の喪失を観察した。その結果、肺血管においてglycocalyxの喪失が認められ、同時に肺血管外水分量の増加が観察された。この病態の成立におけるマクロファージの関与を知るためにchlodronateを用いてマクロファージを排除したモデルをつくり観察した。その結果、肺水腫の形成は抑制されることが示された。白血球の活性化に伴う肺水腫の形成にはマクロファージが重要な役割を果たしていることが示された。本論文は現在投稿準備中である。
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