研究課題/領域番号 |
16K11764
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研究機関 | 東京歯科大学 |
研究代表者 |
一戸 達也 東京歯科大学, 歯学部, 教授 (40184626)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | レミフェンタニル / 組織血流量 / 組織酸素分圧 / 組織酸素消費量 |
研究実績の概要 |
我々は平成25年度基盤研究(C)(一般)「組織血流量の制御に基づく口腔外科手術のための新しい全身麻酔ストラテジー」において、レミフェンタニルが口腔組織血流量を減少させることを示した。しかし、組織血流量の減少は組織への酸素供給減少をもたらす可能性がある。我々の以前の研究では、星状神経節ブロック後には口腔組織血流量と組織酸素分圧は正の相関関係で変化することが分かっている。そこで、本研究は術後の創傷治癒のために重要な因子である組織酸素分圧を十分に維持しながら、組織血流量を制御するストラテジーを考案することを目的としている。 レミフェンタニル投与時の口腔組織血流量と組織酸素分圧との関係について、下顎骨骨髄と咬筋の組織血流量および組織酸素分圧を同時に観察した結果、いずれの組織でもレミフェンタニルによる組織血流量減少は組織酸素分圧の低下を伴わないという興味ある知見が得られた。特に下顎骨骨髄組織酸素分圧は、レミフェンタニル投与中に対照値よりも上昇する傾向があった。このことから、下顎骨骨髄や咬筋の組織酸素消費量が減少した可能性が示唆された。 そこで、下顎骨骨髄や咬筋からの静脈血を集める下顎後静脈の酸素含量と動脈血酸素含量との差を算出し、Fickの原理に基づいて下顎骨骨髄や咬筋を含めた下顎周辺組織の酸素消費量を観察したところ、レミフェンタニル投与によって組織酸素消費量が減少することが示唆された。この減少は、動脈血pH、base excess、乳酸値の有意な変化を伴わず、組織のアシドーシスに起因したものではないことが示唆された。したがって、レミフェンタニルは組織酸素消費量の減少をもたらし、これに見合うだけの組織血流量の減少が起こることによって組織酸素分圧が維持されることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
下顎骨骨髄や咬筋を含めた下顎周辺組織の酸素消費量を観察したところ、レミフェンタニル投与によって組織酸素消費量が減少することが示唆された。この減少は組織のアシドーシスに起因したものではなかった。したがって、レミフェンタニルは組織酸素消費量の減少をもたらし、これに見合うだけの組織血流量の減少が起こることによって組織酸素分圧が維持されることが示唆された。このことは、口腔外科手術におけるレミフェンタニルの有用性を示唆するものであり、本研究のテーマである「口腔・顎・顔面外科手術後の良好な創傷治癒を目標とした全身麻酔ストラテジーの立案」に合致していることから、今後の更なる進展が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
レミフェンタニルによる下顎骨骨髄や咬筋の組織酸素消費量については、動脈血二酸化炭素分圧の変化が組織酸素消費量にどのような影響を与えるかを検討している。その他、各種薬物、血圧変動などが組織血流量と組織酸素分圧に及ぼす影響などについて、順次検討していく。
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