研究課題/領域番号 |
16K11770
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研究機関 | 鶴見大学 |
研究代表者 |
横田 利夫 鶴見大学, 歯学部, 非常勤講師 (60737956)
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研究分担者 |
井出 信次 鶴見大学, 歯学部, 非常勤講師 (00611998)
徳山 麗子 鶴見大学, 歯学部, 学内講師 (20380090)
里村 一人 鶴見大学, 歯学部, 教授 (80243715)
舘原 誠晃 鶴見大学, 歯学部, 講師 (90380089)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 光干渉断層法 / 口腔粘膜 / 診断 |
研究実績の概要 |
近年、生体を非侵襲で観察、診断できる各種装置の研究開発が盛ん行われている。特に光を用いた光干渉断層法(Optical Coherence Tomography;以下OCT)は様々な光源を用いた方式の装置が開発されおり、診断に役立てられ始めている。しかし、口腔粘膜を観察、検査、診断するには、装置の性能、形態あるいは大きさなどが未だ不十分であり、実用にはいまだ至っていない状況である。このような現状から、口腔癌や前癌病変を含む口腔粘膜疾患に対する現在の検査・診断は、歯科医師の視診や触診による臨床所見に依存しており、生検部位等の決定はその歯科医師の経験的判断によってなされており、必ずしも理想的な診断とはなっていないのが、実状である。 一方、超高齢社会を迎えたわが国では、今後口腔癌や前癌病変を含む口腔粘膜疾患が増加することが予想されており、より低侵襲で簡便かつ信頼度の高い口腔粘膜の観察法や検査法の開発および確立が期待されている。そこで本研究では、現在眼科領域で網膜観察に利用されているOCT技術に着目し、口腔粘膜に対する非侵襲かつ正診性の高い定量的検査診断法の確立を目指して、口腔粘膜診断用OCT装置のプロトタイプの試作および実証試験を行う予定としている。 本年度は、口腔粘膜に存在している水やヘモグロビンによる吸収と散乱による障害を可及的に回避できる600nm~1600nmの波長域の中から、各種産業分野において既に使用されている805nmOCTを用いてウサギの口腔粘膜の観察を行った。また、波長による違いを検討することを目的に波長の異なる1300nmOCTも用いて、ウサギの口腔粘膜(舌、歯肉および頬粘膜)と酢酸による潰瘍の観察を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
水、組織液、血液、ヘモグロビン等を多量に含む口腔粘膜組織は固有の吸収、散乱および屈折等の光学的特性を有していることが考えられる。そこで、このような固有特性を踏まえた口腔粘膜の内部構造観察に最適の波長および波長帯域の決定を目指すことを目的として、生体に有害である紫外線よりも波長の長い可視光領域および赤外線領域を含む400nm~3000nmの電磁波領域のうち、口腔粘膜に存在している水やヘモグロビンによる吸収と散乱による障害を可及的に回避できる600nm~1600nmの波長域の中から、各種産業分野において既に使用されている805nmOCTを用いてウサギの舌、歯肉および頬粘膜の観察を行なった。さらに口腔粘膜疾患の診断という観点から最適と考えられる(すなわち生体内浸透深さが1.5~2.0mmあるいはそれ以上となる)OCT観察像が得られる波長(中心波長)および出力を見い出すために、波長の異なる1300nmOCTを用いて検討した。805nmOCT観察像と1300nmOCT観察像を比較検討したところ、805nmの方が解像度がよくより鮮明に観察可能であった。波長の異なるOCTを使用した実験を行ったが、波長の違うOCTを製作するための準備・開発および改良に予想以上に時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
波長を中心として、フィルタリング等により種々の波長帯域(20nm~170nm)を設定する。軸(深さ)方向および水平方向の分解能は波長帯域によって規定されるため、各種波長帯域を設定した状態で、ウサギの口腔粘膜を観察、画像処理技術を用いて得られた軸(深さ)方向分解能および水平方向分解能につき検討する。これにより両方向の分解能がともに10μm(可能であれば5μm以下)となる波長帯域を確定する。本年度検討した波長および波長帯域を用いて、ヒト口腔粘膜(舌、歯肉、頬粘膜)の観察を行う。対象としては、口腔癌などの口腔疾患に対する手術療法の際に摘出または切除された手術材料で、病理組織学的検査および診断が終了した10%中性緩衝ホルマリン固定された口腔組織を用いる。まず対象組織に対してOCT観察を行い、その後OCT観察を行った同一部位の組織切片を作製、HE染色を施し、OCT観察像との比較検討を行う予定である。これにより、ウサギ口腔粘膜で得られていた観察可能深度、解像度等につき詳細に確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) OCT装置を開発・改良および作製することに時間がかかり予定通り研究が進行しなかったため、次年度使用額が生じた。 (使用計画) OCT装置の開発ができれば、実際に組織を観察し、評価後に少し改変のみであると考えられる。本年度と次年度の助成金は装置の小型化をする際にウシオ電機(株)や長田電気(株)等の協力を得た際の開発費用、また学会発表や論文を投稿する際に使用する。
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