研究課題
本研究では、口蓋癒合後の離開について、口蓋形成期のTCDDへの暴露により口蓋組織構造に異常が生じ、その異常が一旦癒合した口蓋の離開に関与しているのではないかという仮説を立て、実験を行った。口蓋裂を100%発症する濃度のTCDDに暴露された口蓋癒合期のマウス胎仔では、複数の個体において口蓋癒合途中で離開に転じている場合があることが確認された。H-E染色では、TCDD投与群では口蓋後方部において、口腔側からの口蓋の離開を認めていた。免疫組織学的分析では、上皮および基底膜の観察において、対照群の前方と後方の口蓋では、口蓋鼻腔側および口腔側粘膜、上皮索において上皮細胞に陽性を示し、lamininは連続的な染色像を認めていた。TCDD投与群の前方の口蓋癒合部では、鼻腔側および口腔側粘膜、上皮索において上皮細胞に陽性を示し、鼻腔側粘膜および上皮索においてlamininは連続的な染色像を認めたが、口腔側粘膜では不連続な染色像を認めていた。TCDD投与マウスにおいて口蓋癒合後の離開による口蓋裂の発症機序として、がんの浸潤・転移が知られており、がん細胞が他の組織へ移動する際には、基底膜の破壊を伴うとされ、本研究において、TCDD投与群の口蓋離開部を含む口蓋粘膜で上皮および基底膜の断裂を認めていたことから、口蓋癒合後の離開による口蓋裂の発生原因の一つには基底膜構造の異常があることを示唆していた。また、異常な細胞増殖が口蓋の離開を生じる要因の一つである可能性が示唆された。口蓋裂を発症するまでの段階において一度癒合した口蓋が離開に転じる機序を解明することにより、離開を阻止する要素が発見される可能性が考えられ、新たな口蓋裂発症の予防法の確立につながることが期待される。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
Congenit Anom.
巻: 58(4) ページ: 124-129
10.1111/cga.12259.
J Craniomaxillofac Surg.
巻: 46(12) ページ: 2027-2031
10.1016/j.jcms.2018.09.016.