研究課題
小児の閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)は、内分泌代謝の異常、学習認知機能の障害、精神発達遅滞のみならず、成長遅延をもたらし、生涯にわたる重篤な全身疾患の引き金となる。小児OSAの病態的特徴である、就寝中の間欠性低酸素(Intermittent hypoxia: IH)血症は、心血管障害や中枢神経系の発達異常とともに、顎骨の低成長、上部気道組織の炎症亢進などの顎口腔咽頭領域の成長発達の変調を惹起することから、IH曝露の顎口腔成長障害における病態制御機構の詳細の解明が求められる。IH曝露は、脳内のセロトニン分泌神経受容体(5-HT受容体)の活動を低下させ、副交感神経活動を抑制し、拮抗する交感神経の活動を促進する。また、セロトニン減少は、睡眠誘導ホルモンの産生低下による睡眠障害ならびに上部気道筋の虚脱をもたらすとともに、視床下部からの成長ホルモン放出ホルモンの分泌を抑える。本研究は、小児OSAにおける顎口腔領域の成長障害および上部気道筋の機能変調は、IH曝露によるセロトニン分泌神経受容体の機能低下とその下流である交感神経受容体の亢進により誘発されることを仮説とし、成長期IH曝露ラットに対して、交感神経阻害剤による介入を行い、(1)交感神経受容体を介した顎骨成長障害機構の検証を行うとともに、(2)上部気道金の筋虚脱の発症機構を解明する。また、(3)IH状態に曝露される成長段階の差異による病態への影響を検証するため、出生前(妊娠期動物)、哺乳期、離乳期、思春期前後の異なる成長段階のラットIH曝露モデルを作製し、成長段階の差異による睡眠呼吸障害の成長発達への影響について検証した。結果、出生前IH曝露による出生後の上部気道筋の速筋化の誘発、哺乳期IH曝露による顎骨および関節軟骨の形成障害が明らかにされるとともに、交感神経β受容体の薬理学的阻害による顎骨成長の回復が示された。
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