研究課題/領域番号 |
16K11782
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
米満 郁男 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (00431940)
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研究分担者 |
細道 純 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 講師 (00420258)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 鼻呼吸障害 / 顎関節 / 咀嚼筋 / HIF-1α / GLUT4 |
研究実績の概要 |
口呼吸に伴う持続的低酸素状態が、『咀嚼筋収縮に関与するGlucose Transporter-4(GLUT4)の発現を低下し咀嚼筋の筋組成変化をもたらす』、ならびに『顎関節内の低酸素誘導因子(Hypoxia-Inducible Factor-1α: HIF-1α)の増加を誘発し、軟骨内骨化による下顎骨の成長を抑制する』、という2つの仮説を検証することを目的とし、実験を行ってきた。 本年度は、9週齢ラット顎関節矢状断連続切片を作製し、トルイジンブルー染色による軟骨細胞層の厚径の計測後、TRAP染色による軟骨細胞層直下における破骨細胞数の計測に加え、軟骨細胞層における抗HIF-1α抗体・抗Osteoprotegerin(OPG)抗体・抗VEGF抗体・抗RANKL抗体を用いた免疫組織化学染色を行い、関心領域当たりの免疫陽性細胞数を計測した。実験群において破骨細胞数は増加し、各免疫陽性細胞数は、抗HIF-1α抗体は有意に増加、抗OPG抗体は有意に減少、抗VEGF抗体は有意に増加し、抗RANKL抗体は有意に増加した。その結果、RANKL/OPG比の値は有意に増加し、軟骨層直下における骨代謝は吸収亢進傾向となっていることが示唆された。 また、各種咀嚼筋においては、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)およびGLUT4の免疫組織化学染色とRT-qPCRを行って筋収縮能を解析した。5週齢および9週齢咬筋浅層、深層および側頭筋において、実験群のTNF-α mRNAとそのタンパク発現量は有意に増加し、GLUT4 mRNAとそのタンパク発現量は有意に減少した。すなわち、片側鼻閉に伴う鼻呼吸障害は、閉口筋の筋収縮能を低下させることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画に沿って実験を行い、海外誌および国内英文誌にそれぞれ1編ずつ投稿した。査読者より、顎関節矢状断切片に対して、抗OPG抗体ならびに抗RANKL抗体を用いた免疫組織化学染色の必要性を指摘されたため、追加実験を行った。 予期せぬデータの追加を行ったものの、概ね順調に当初の計画を実行してきている。
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今後の研究の推進方策 |
ラット実験期間の途中週齢の咀嚼筋および下顎骨の組織学的、生化学的解析を進め、当初の実験計画を全て終了させる。また、撮影した下顎骨micro-CT画像を用いて、顎関節頭および下顎骨の3次元的計測についても検討していきたい。 さらには、今後の本研究の発展のために、成長期の鼻閉からのリカバリーモデルの作製とその解析についても現在検討中である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年3月1日より2019年3月10日までの期間、スイス ジュネーブ大学 歯学部 矯正科との共同研究のため、所属機関には研究休職を申請し、海外に研究留学していた。その間、国内の研究協力者と定期的に連絡を取り合い、本研究を継続し、その成果を論文を纏めた。 次年度は、ラット実験期間の途中週齢の咀嚼筋および下顎骨の組織学的、生化学的解析を進め、当初の実験計画を全て終了させるとともに、今後の本研究の発展のために、成長期の鼻閉からのリカバリーモデル作製とその解析について検討している。
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