研究課題/領域番号 |
16K11785
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
三原 聖美 大阪大学, 歯学研究科, 招へい教員 (00551920)
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研究分担者 |
黒坂 寛 大阪大学, 歯学研究科, 助教 (20509369)
伊藤 慎将 大阪大学, 歯学研究科, 助教 (40633706)
山城 隆 大阪大学, 歯学研究科, 教授 (70294428)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 口唇口蓋裂 / SHHシグナリング / 上皮細胞 |
研究実績の概要 |
二次口蓋は胎生期に左右の口蓋突起がまずは下方に成長し、水平方向に翻転、伸長し、最後に上皮組織が取り除かれて癒合することで形成される。これらの発生学的イベントは時間的・空間的に厳密に制御されており、いずれか一つでも障害されると口蓋裂が生じる。一方、四肢や身体の正中構造を決定するSonic hedgehog(以下SHH)シグナリングは正常な口蓋発生にも必要不可欠である事が知られており、異常なSHHシグナリングはマウス及びヒトの口唇裂・口蓋裂の発症に関与することが分かっている。しかし、二次口蓋の上皮を取り除く過程においてSHHシグナリングがどのように関与するかは未だ不明である。そこで本研究ではSHHシグナリングが二次口蓋癒合時の上皮の除去にどのように関与するのかを詳細に解析し、口蓋裂発症における新たな分子及び細胞学的メカニズムを解明する事を目的としている。本年度の研究では顎顔面発生中SHHの濃度勾配が影響を受けるHhat;Ptch1のダブルノックアウトマウスの組織切片を作製し、二次口蓋において取り除かれる筈の上皮が同ノックアウトマウスでは取り除かれない事を見出した。この事は二次口蓋発生時におけるSHHの適切な濃度勾配は二次口蓋発生時の上皮細胞の挙動に非常に重要である事を強く示唆している。胎生時の二次口蓋表面の上皮細胞の挙動を観察する実験系をK14GFPマウスの口蓋半側培養を用いた手法にて確立した。更に培養中のライブイメージングより二次口蓋癒合時において非常にアクティブな上皮細胞の移動が起こっている事を見出した。さらに細胞骨格の形成を阻害するRock inhibitor等の試薬を作用させる事によりこの細胞移動を阻害する事が可能である事を見出した。この事は本手法が二次口蓋における上皮細胞の挙動を観察する上で非常に有用な実験系である事を示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画書では本年度においてHhat;Ptch1のダブルノックアウトマウスを作製する予定であったが、未実施である。ただし、それに代わる実験系を確立した為、本年度は同実験手法も平行して用いる事により研究を遂行していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度において確立された二次口蓋の半側除去モデルを使用して、SHHシグナリングの阻害剤や促進剤を用いて口蓋癒合の際に重要な上皮の細胞移動にどの様な影響があるのかを詳細に解析する。この実験系をもちいてエレクトロポレーションなどを行い単一細胞レベルでの挙動解析を行う。さらにSHHシグナルを調節した際の変化を詳細に解析する事により、ヒトにおける口蓋裂の病因の一端を解明する。また、顎顔面発生中SHHの濃度勾配が影響を受けるHhat;Ptch1のダブルノックアウトマウスの網羅的遺伝子発現解析を行い、下流遺伝子の探索を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度の実験に使用する試薬等の費用に充てるため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度に計画している実験の試薬購入の費用に充てる予定である。
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