研究課題/領域番号 |
16K11786
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
星島 光博 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (30736567)
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研究分担者 |
服部 高子 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (00228488)
青山 絵理子 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (10432650)
滝川 正春 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (20112063)
西田 崇 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 准教授 (30322233)
上岡 寛 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (80253219)
久保田 聡 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (90221936)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 骨組織 / 骨細胞 / 細胞内輸送 / Rab14 / CCN2 |
研究実績の概要 |
申請者はこれまでに軟骨分化促進因子CCN2の結合因子として細胞内輸送制御因子Rab14を同定し、各々が骨および肺組織で極めて高い発現を示すことを明らかにした。本研究ではRab14とCCN2の分子間相互作用が、骨および肺組織の細胞の基質産生に及ぼす影響を解明することを目的としている。昨年度までに骨細胞の成熟過程でRab14とCCN2の発現レベルが上昇することを、骨細胞様細胞株であるMLO-Y4細胞の3次元培養で明らかにしてきた。 本年度は骨細胞の成熟過程におけるRab14とCcn2のmRNA発現上昇に伴い、どのような因子が変動し、細胞の生理作用に影響を及ぼすかを調べた。骨組織中の類骨骨細胞と類似した形態的特徴を持つ3次元培養開始3-7日目のMLO-Y4細胞と比較し、成熟骨細胞様の長い突起を持つ15日間長期培養した細胞では、Ⅰ型コラーゲンやオステオカルシンのmRNAの発現が有意上昇していた。さらに、細胞内カルシウム応答に関与するc-Fos、コネキシン43およびパネキシン3のmRNAが、長期間3次元培養したMLO-Y4細胞で著しく上昇していることを明らかにした。また、ニワトリ胚頭蓋冠の骨細胞に流体剪断応力を負荷したところ、類骨中の幼弱骨細胞と比較して、石灰化骨に囲まれている成熟骨細胞では、細胞内カルシウムイオンの上昇率が有意に高い値を示すことが明らかとなった。 これらの結果から、骨細胞の成熟に伴ってRab14とCCN2の発現が亢進し、基質産生を活性化するだけでなく、細胞内カルシウム応答にも影響を及ぼす可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究ではRab14とCCN2の相互作用が、骨あるいは肺組織の細胞に対して、どのような生理作用を及ぼすかを明らかにすることを目的としている。骨細胞の成熟に伴ってRab14とCCN2の発現が上昇し、基質産生を促進することをこれまでに示してきたが、本年度はこの過程でカルシウムイオンの応答が亢進されることを明らかにした。特に幼若骨細胞から成熟骨細胞に分化する過程で、Rab14とCCN2と同様にパネキシン3などが発現上昇し、成熟骨細胞でカルシウム応答が促進することを示した結果については国際誌に投稿し掲載された。 一方で、本年度予定していた骨細胞の小胞体ストレスや肺組織の細胞におけるRab14とCCN2の影響についての検証、また動物実験による骨や肺組織の形成や疾患へ与える影響の解明については遅れている。現在、これらの細胞においてRab14とCCN2の発現制御を行うことで、両者の挙動や細胞内のストレス変化の解析を行っていており、これまで結果との関連性を見出し、今後報告していきたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
I. Rab14とCCN2の相互作用が骨細胞の生理作用及ぼす分子メカニズムついて検討する。 骨細胞の成熟に伴い、Rab14およびCCN2のmRNAの発現レベルが上昇するとともに、基質産生、カルシウム応答が亢進されることが示された。そこで、骨細胞株の3次元培養系で、Rab14およびCCN2の発現を抑えることで、これらの細胞に生じる変化をコントロールと比較することを検討している。特に細胞内で小胞輸送の秩序が崩れ、輸送されなかったタンパク質が細胞内に蓄積する可能性があるため、小胞体やゴルジ体ストレスに関与する因子の発現レベルを解析する。さらに、骨細胞における基質タンパク質の輸送・分泌や、カルシウム応答におけるRab14とCCN2の役割を分子レベルで明らかにしていく。同様にHLF細胞等の細胞株を用いて、肺線維芽細胞におけるRab14およびCCN2の作用についても検証していく。 II. Rab14とCCN2が、骨や肺組織の形成や疾患へ与える影響を解明する。 全身CCN2をタモキシフェン誘導性に欠損させることができるコンディショナルノックアウトマウスおよびCcn2トランスジェニックマウスを用い、骨組織に見られる影響をマイクロCTにより解析することを考えている。また、これらのマウス由来の骨や肺組織切片で、Rab14とCCN2の局在を組織レベルで検出すると共に、CCN2の有無あるいは発現量の違いによるRab14の挙動や分泌タンパク質等の状態を組織レベルで調べる。これらの結果から、骨および肺組織における基質形成にCCN2、Rab14がどのような影響を及ぼすかを調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度使用した材料や機器については、前年度と共通するものが多く、キット試薬等は購入したものの、研究費の支出は限定的なものが多かった。次年度使用額は488,275円となったが、細胞や抗体、キット試薬等の材料の購入や論文の投稿を予定しており、今後、多くの支出が見込まれる。ノックダウン実験用のsiRNAや細胞への導入試薬の購入については、既に決定しており、頻繁に使用するキット試薬についても近日中の購入が必要である。これまでの研究成果を集約して報告するに当たり、次年度の研究費と合わせて有効に使用できると判断した。
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