矯正歯科治療における金属アレルギーとエナメル質脱灰に対する対策は重要であり、高い生体親和性とエナメル質再石灰化誘導能を有する矯正用材料の開発が望まれる。本研究では、バイオガラス(BG)の高い生体親和性とイオン溶出能、キトサンの再石灰化反応におけるイニシエーターとしての働き、銀ナノ粒子の抗菌性等の複数作用が期待できるBG/キトサン/銀ナノ粒子を創成し、この粒子を用いたエレクトロディポジショニング(EPD)法による矯正装置の表面改質法と改質層の機能について検討することを目的とする。平成30年度においては、BGとEPDを用い、矯正用ステンレスワイヤーの表面改質について調べた。BG改質層は分光測色法、3Dレーザー顕微鏡および走査型電子顕微鏡にて評価した。試料の特性をナノインデンテーション試験、3点曲げ試験および引き抜き摩擦試験により調べた。より高い15Vで表面を改質した試料は、低い電圧(10V)で作成した試料と比較して、良好な審美特性、低い表面粗さおよび高い機械的特性(ナノ硬さ、ナノ弾性係数)を示した。3点曲げ試験では、BG改質試料は、有意に低い弾性係数を有し、非改質試料と同レベルの摩擦特性を発揮した。
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