研究課題/領域番号 |
16K11796
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
葛西 一貴 日本大学, 松戸歯学部, 教授 (30169396)
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研究分担者 |
山口 大 日本大学, 松戸歯学部, 准教授 (60333100)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 後戻り / Daidzein / 歯の移動 / コラーゲン代謝 |
研究実績の概要 |
【目的】矯正歯科臨床で保定終了後に後戻りがみられることが多く、特に捻転歯は長期保定しても後戻りがみられることが多い。後戻りの局所的原因として、治療により圧迫や伸展された歯根膜のコラーゲン線維が充分にリモデリングされていないことが原因であるとの報告がある。Daidzeinは、イソフラボンの1種で大豆から抽出された化合物であり、構造は女性ホルモンの1種のエストロゲンと似ている。骨粗鬆症等の疾患に応用されたり、また美容領域では、抗皺材料として皮膚線維芽細胞のコラーゲン代謝を促進する重要な因子であるとの報告がある。そこで本研究は, リモデリングや骨形成を促すDaidzeinの作用に関する研究の一環として, in vivoにおいてラットの動的治療後のDaidzein処理による歯牙移動量を検討した。【資料および方法】6週齢のWistar系雄性ラット(日本大学松戸歯学部動物実験委員会第AP15MD017号 )の上顎第一臼歯に10gの矯正力を14日間加えたのち装置を除去し、実験群にはdaizeinを対照群にはPBSを7日間歯肉注射し、後戻り量をμCTにて測定した。 【結果および考察】除去後7日目においてdaidzein 50ng/mlで75.3%、500ng/mlで75.1%後戻りを有意に抑制した。以上のことからdaidzeinはコラーゲン代謝の促進を介して後戻りを抑制することが示唆された。【結論】Daidzeinはヒト歯根膜のコラーゲン線維のリモデリングを促進し、矯正治療後の後戻り抑制に有効である可能性が示唆された。矯正臨床において, 動的治療後の短期間では, 歯根膜のリモデリングが不十分であるため元の状態に戻りやすいと考えられている。そのため歯根膜線維の再構成を促し, リモデリングの速度を速める事で後戻り抑制につながる可能性があると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ラットを用いた実験的歯の移動モデルにて、daidzeinを歯肉注射および経口投与し、マイクロCTを用いて後戻り抑制効果を確認した。その結果、歯肉注射において除去後7日目においてdaidzein 50ng/mlで75.3%、500ng/mlで75.1%後戻りを有意に抑制した。また、経口投与において10mg/kgで約50%後戻りを抑制した。以上のことから、daidzeinが当講座の先行研究で報告したrelaxinと同程度の後戻り抑制効果を有し、それはコラーゲン代謝の促進を介して後戻りを抑制すること可能性が示唆された。平成28年度の計画はおおむね順調に遂行できたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
当該観察期間を経過したラットを10 %中性ホルマリン溶液にて灌流固定した後、上顎骨を摘出し、10%中性ホルマリン溶液にて4 ℃で24時間浸漬固定を行う。その後、EDTA溶液にて室温で2週間脱灰し、パラフィン包埋後、当該臼歯を横断方向に厚さ4 µmの薄切切片を作成し、歯根周囲組織のCOL-I、COL-Ⅲ、MMP-1、MMP-8、Receptor activator of nuclear factor kappa-B ligand (RANKL)、RANK、Osteoprotegerin (OPG)、ALP、TRAPの発現をHE染色、COL-I抗体、COL-Ⅲ抗体、MMP-1抗体、MMP-8抗体、RANKL抗体、RANK抗体、OPG抗体、ALP抗体、TRAP抗体を用いた免疫組織化学染色にて検討を行う。
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