研究課題/領域番号 |
16K11798
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研究機関 | 松本歯科大学 |
研究代表者 |
荒井 敦 松本歯科大学, 歯学部, 助教 (00532772)
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研究分担者 |
小林 泰浩 松本歯科大学, 総合歯科医学研究所, 教授 (20264252)
山田 一尋 松本歯科大学, 歯学部附属病院, 教授 (40182521)
溝口 利英 松本歯科大学, 総合歯科医学研究所, 講師 (90329475)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 破骨細胞 / オートファジー / 破骨細胞前駆細胞 / Beclin 1 / LC3B / TRAF6 |
研究実績の概要 |
矯正力が誘導する骨改造において、破骨細胞は中心的役割を担うが、破骨細胞の誘導機構の詳細は不明である。我々は破骨細胞の誘導研究において、破骨細胞への分化が決定した前駆細胞(quiescent osteoclast precursors, qOP)を同定した(J Cell Biol 184: 541, 2009)。本研究は、矯正力によるqOPのオートファジー誘導機構を解明する。Autophagyは細胞成分を代謝する主要分解機構であり、細胞の恒常性維持において重要な役割を担っている。 近年、細胞の分化、活性の過程においてAutophagyが関与することが報告されている。 破骨細胞においても、Autophagy関連遺伝子が欠損することで破骨細胞の骨吸収機能不全が起こることが明らかになった。 しかし、破骨細胞分化過程においてAutophagyがどのような役割を担っているかについてはいまだ不明な点が多い。 そこで我々は破骨細胞分化におけるAutophagyの役割について解析をおこなった。 昨年までの解析により、野生型マウス由来の骨髄マクロファージ(M)へのRANKL刺激は、オートファゴソームの主要成分LC3Bの発現を増加させた。 さらにAutophagy関連遺伝子Beclin 1の発現もRANKL刺激により上昇した。 またBeclin 1の過剰発現は破骨細胞分化を亢進した。本年度は新たに、RANKL刺激によるBeclin1の発現誘導メカニズムの解析を行った結果、①RANKL刺激によりBeclin1へのubiqutinチェーンの結合が増加、②Beclin1へのubiqutinチェーンの結合はTRAF6を介するメカニズムであることが考えられた。 これまでの結果より、RANKL刺激によるAutophagyの活性化は、Beclin 1により生じることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
破骨細胞分化におけるAutophagyの役割について解析をおこなった結果、in vitroにおいて、オートファゴソームの主要成分の一つであるLC3Bの発現をWestern Blottingにて解析をおこない経時的に発現量が増加していることを確認できた。マクロファージの細胞株であるRaw264.7細胞にGFP-LC3Bベクターをインフェクションし、コンフォーカル顕微鏡を用い細胞内のLC3Bの発現を観察したところ、RANKL添加によりGFP陽性のLC3Bの発現上昇が確認できた。次に、Autophagy活性の初期段階に必要とされるBeclin 1の発現についてもin vitro解析をおこなったところ、RANKL刺激によりその発現が上昇していた。そのため、Raw264.7細胞にBeclin 1を過剰発現させ、破骨細胞分化能の解析をおこなった結果、コントロール細胞と比較し破骨細胞数は増加していることを確認した。 さらに、RANKL刺激によるBeclin 1の発現上昇のメカニズムについての解析をおこなった。LPS-TLR4シグナルによって、TRAF6が活性化することでBeclin1へUbiquitinチェーンが結合しAutophagyが活性化されることが報告されていることから(Shi C et al Science Signaling, 3, 42 2010)、RANK-RANKLシグナルによっても同様な現象が起こる可能性があると考え、RANKL刺激によるBeclin 1へのUbiquitinチェーンの結合の有無を解析した。その結果、RANKL刺激によりBeclin1へのubiqutinチェーンの結合が増加したことを確認した。 これらのことより、骨髄マクロファージおよび細胞株Raw264.7細胞を用いたin vitro解析はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究結果により、破骨細胞分化過程におけるAutophagyの役割について解析をおこなってきた。その結果、RANKL刺激によるAutophagyの活性化は、Beclin 1により生じることが示唆された。さらに、RANKL刺激によるBeclin 1の発現上昇のメカニズムについての解析ではLPS-TLR4シグナルによって、TRAF6が活性化することでBeclin1へUbiquitinチェーンが結合しAutophagyが活性化されることが報告されていることから(Shi C et al Science Signaling, 3, 42 2010)、RANK-RANKLシグナルによっても同様な現象が起こる可能性があると考え、RANKL刺激によるBeclin 1へのubiquitinチェーンの結合を確認したところ、ubiquitinチェーンの結合増加が認められた。 in Vivo解析に関しては、Beclin 1のノックアウトマウスは胎生致死のため、ヘテロノックアウトマウスを用いて解析をおこなったが、野生型マウスと比較しても有意な差は確認できなかった。今後の推進方策として、現在Beclin1のコンディショナルノックアウトマウスを作製中であり、近日中にマウスの解析をおこなう予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)当初計画していた研究の解析に時間がかかってしまったため、使用する物品の一部の購入が遅れ差額が生じた。 (使用計画)差額は平成29年度に購入をする予定だった物品を購入する予定である。
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