研究課題/領域番号 |
16K11808
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
星野 倫範 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 准教授 (00359960)
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研究分担者 |
近藤 好夫 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 助教 (30581954)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | Prevotella / melaninogenica / 誤嚥性肺炎 / T9SS |
研究実績の概要 |
これまで誤嚥性肺炎の原因となる細菌種はどれかという網羅的な報告は存在するが、特定の菌種のどの病原因子が誤嚥性肺炎を誘発し、病態を増悪させるかという細菌学的側面からの研究はあまりない。そこで特定の細菌種の誤嚥性肺炎の病原因子の同定を行うために、誤嚥性肺炎の起炎菌の一つとされるPrevotella melaninogenicaに注目した。この菌種はβ-ラクタマーゼ産生株も存在し、β-ラクタム系抗菌薬に高い抵抗性を示すため、特に注意が必要な菌種で、口腔に常在する偏性嫌気性桿菌で誤嚥性肺炎との関連が強く指摘されている。 歯周病原性細菌であるPorphyromonas gingivalisやTanerella forsythiaなどのBacteroidetes門細菌に属する細菌は、T9SSと呼ばれるタンパク分泌機構を有し、この機構が菌体表層への歯周病原因子の輸送に関わることが示唆されている。同じくBacteroidetes門に属するP. melaninogenicaもタンパク分泌機構T9SSを有し、これを介して病原因子を輸送していることが想定され、その輸送される病原因子にの中に誤嚥性肺炎に関与するものも含まれると考えられる。 そこで、本研究ではまずP. melaninogenicaのもつT9SSをデータベース上に存在するBacteroidetes門細菌のT9SS関連遺伝子(porK, L, M, N)を参考にして遺伝子配列を決定し、そのノックアウト変異株を作成することで、細菌学的・生化学的表現型からこれを介して分泌される病原因子が何か?また、接種実験によって病原性は低下するか?さらにはゲノムのシークエンスを行ってこの経路を介して分泌される誤嚥性肺炎の病原因子の候補となるものの同定を行い、さらにはマウスでの誤嚥の実験を行うことで誤嚥性肺炎の病原因子の決定を行うことが本研究の概要となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はまずP. melaninogenicaのTS9SS core complexをコードする遺伝子porK, L, M, Nのうち、porKに対する変異株を相同組換えにより作成することとした。まずデータベースより他のBacteroidetes門に属する細菌種のTS9SS core complexをコードする遺伝子を抽出してこれを参考に、P. melaninogenicaのporK, L, M, Nに対応する遺伝子を決定した。この結果に基づき、porKに対するtargeting vectorを作成し、相同組換えによりporK変異株を作成した。 その結果、P. melaninogenica野生株は血液寒天培地上で黒色コロニーを形成するが、変異株のコロニーは乳白色を呈し、ヘムの蓄積が起こらないと考えられた。また、スキムミルク含有の培地上ではハローの形成が減少したことから、プロテアーゼの産生が減少したと考えられた。ウサギ脱線血を用いた赤血球凝集性に関しては、野生株では認められたが、変異株では認められなかった。生菌のマウスへの摂取試験では、野生株が80%の致死率であるのに対し、変異株では20%と低下した。さらに培養上清の二次元電気泳動では検出されるスポットが野生株と比べると変異株では大幅に減少するのが確認された。 以上の結果から、P. melaninogenicaはporKをノックアウトすることで全体的な病原性が低下していると思われるので、T9SSを介した誤嚥性肺炎の病原因子も存在すると思われた。 本研究のここまでの成果は平成29年4月22、23日に開催された第14回日本口腔ケア学会で報告した。
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今後の研究の推進方策 |
T9SSを介したタンパク分泌機構はP. melaninogenicaにおいてもその病原因子の輸送に関与していることが示唆されたことから、そのなかには誤嚥性肺炎に関与するものも含まれていることが考えられる。 今後はP. melaninogenicaのゲノムシークエンスを行って、誤嚥性肺炎の原因となる因子のシークエンス情報を確定し、必要があれば対象となる遺伝子の変異株の作成を行ったり、野生株、変異株の接種、誤嚥実験を行ったりすることでP. melaninogenicaによる誤嚥性肺炎の発症のメカニズムが解明できると考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費が定価額より割り引かれたことや旅費を節約することで少額ではあるが余剰金として計上された。
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次年度使用額の使用計画 |
今後はゲノムシークエンス決定のための次世代シークエンスを行うための受託費や病原タンパクに対するポリクローナル抗体の作成費用が計上される可能性があるのでこれに充てる予定である。
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